第115夜 Iron Wind

鉄の風はお香の香り

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DATA

Name: Iron Wind(アイアン・ウィンド)
Brand: Tobali
Launched in 2018
Perfumer: unknown
100ml ¥16,500

My Episode

TOBALIは2017年創設の東京発のフレグランスブランドだ。最初はフランスで販売を開始し、日本には逆輸入という形でお披露目され、大注目されているニッチフレグランス。
ぼくが初めてこのブランドのことを知ったのは2019年に伊勢丹で行われたサロン・ド・パルファンというイベントだ。
このイベントについては今までも何度か書いているが、とにかくぼくにとっては本当に新たな香水の旅が始まったと思わせるような出会いがたくさんあり、このTOBALIもそんな出会いの一つだった。
とにかくTOBALIのブースには大勢の人がいて、中の方とゆっくりとお話ができなかったのが非常に残念だったのだが、そんな中でぼくが選んだのがこの「IRON WIND」という香りだった。
実はこの香りを購入する際、TOBALIというブランドはもちろんのこと、この香水に関する予備知識はまったくなかった。
ただ、非常に日本の香木に近い佇まいを感じて、この香りを手に入れたのだった。
そして、後から知ったことなのだが、なんとこの「IRON WIND」はウード系の香水だったのである。
なるほど、だからぼくの鼻はこんなにも惹かれてしまったのだと思った。
しかも、ちゃんとアガーウッドが入っていながらも、他の今までぼくがここで紹介してきたアガーウッドの入った香水とはまったく雰囲気が異なる。そこが非常に面白い。
フランスでTOBALIが注目されたのも、きっとこの他の欧米の香りとは違うものの、ちゃんとしっかりと香る、というところが受け入れられたのではないかと思った。
日本のブランドだから、きっと柔らかい優しい香りなんだろうと侮ってはいけない。
意外にもしっかりと香るのだ。
例えば、この「アイアン・ウィンド」も最初からちゃんとお香のような檜のような独特の香りがする。
肌の上できちんと自己主張ができる香りでありながらも、他の今までの香りとは一線を画しているところが非常に魅力的なのだ。
ぼくが最初にこの香りから感じ取ったのは平安時代の貴族たちが着物に香を焚きしめている様子だ。ぼくは以前ある人に「武田さんって、毎朝お香を焚いているの?」と言われたことがあるのだが、この香りはまさにそんな感じがするのである。
でも、それだと非常に柔らかい香りをイメージしてしまうと思うが、香を焚きしめたとしても、しっかりと芯がある感じと言えば伝わるだろうか?
とにかくふわふわしているわけではない。
しっかりと香りが存在するけれども、スモーキーな香りがそれを浮遊させているという感じだろうか。

公式のサイトには次のような説明文が載せられている。

鋼鉄が空気を切り裂き生まれる<強き>風、大地のごとく深い<情愛>。 上質なサフランと貴重な沈香の不調和を超越した調和。官能的なオリスがさらに力強さを与える。 独創性に満ちた、木々の香りの新たなる創造。

そうか、この芯のある強さから、IRON WINDという名前が付けられたのか。と改めて香りのコンセプトとネーミングに納得してしまった。

さらに調べてみたら、この香りはあの織田信長をモチーフにして作られたのだとか。なるほど、一見ふわっと香るように見えて、芯があり、スリリングに感じるのは、織田信長の佇まいから感じられるものなのね、とこれまた納得。

そして、びっくりしたことに、TOBALIの香水は他にもウードを使った香りがいくつもあるので、これから少しずつ集めていきたいと思っているのである。

NOTES

Top notes:Cumin, Cloves, Saffron
Middle notes:Ambrette (Musk Mallow), Agarwood (Oud), Hot iron, Iris, Violet Leaf
Base notes:Woody Notes, Incense, Cedar

トップの3つの要素を見て、なるほど、と膝を打った。
この独特の芯のある香りはこの三つが合わさったものなのだ。
大胆なスパイスを感じるんだけど、それをミドルのウードなどで中和させ、ベースのインセンスやシダーと絡ませているからお香のような香りが出るのだと香料を見て分かった。

ところで、日本の公式サイトでベースノートとして明かされているHidden Japonism 834というのは、独自のベース香料で、静かで暖かなウッディノートなのだそうだ。

そして、色々と調べてみたら、トバリの香水は400年以上も日本の香文化を牽引している日本香道をパートナーにしていて、なるほど、そういうことなのね、とまた改めてこのブランドの魅力を見つけてしまったのである。


My Evalution

★★★★★

実は購入してからたまにしか纏う機会がなかったのだが、今回改めてこの香水の素晴らしさに気づいたので、これからはもっと積極的にこの香りと向き合おうと思っている。もちろん、他のTOBALIの香水も試していきたい。