第200夜 Whispers in the Library

囁くような優しい香り

f:id:happyinkdays:20210913000205j:plain

 

DATA

Name: Whispers in the Library(ウィスパーズインザライブラリー)
Brand: Maison Martin Margiela 
Lauched in 2019
Perfumer: unknown
50ml ¥8,800

My Episode

香水というのは、目に見えないものだから、イメージがとても大切だと思う。だから、ボトルの美しさや香水の背景にあるストーリーなどの他にタイトルというのも香水を選ぶ際の大きな基準になる。
その香水の名前を聞いただけで、どんな香水なんだろう?と想像力をかきたてられるし、実際に香りを試してみた後もその名前との関連性を自分なりに考えてみたりするのも楽しい。
子どもの頃から本を読むのが好きだったぼくにとって、図書館は天国のような場所だった。文字さえ読むことができれば、ページを開けばそこに新しい世界が広がっている本がずらっと本棚に並んでいるんである。
未来に行くこともできれば過去の時代にタイムスリップすることもできるし、殺人現場に出くわしたり、犯人を推理したり、大恋愛をしたり、不倫をしたり、なんでもござれの小説の世界が無限に広がっている図書館。
そんな図書館をイメージした香りとしてまっさきに思い浮かべるのがフエギアの「ビブリオテッカデバベル(バベルの図書館)」だ。
今日ご紹介するメゾン・マルジェラもまた図書館がテーマ。
正確にいえば、図書館そのものというよりも「図書館の中の囁き」がテーマ。
図書館の中では大声で話すことはできないので、どうしても会話を交わす時には囁き声になってしまう。そんな図書館での囁き声を香りにしたというのだろう。
名前からではまったく香りが想像できないところも面白いのだが、実際に香りをかいでみても、くっきりと香りの輪郭がつかめない。
そこが「バベルの図書館」とかなり異なる。
柔らかい甘い香り、ということしかわからない。
オードトワレなので、オードパルファムよりも濃度が低く、そのために香りもどちらかというと弱めなのだが、この香りもぼくの肌の上ではやさしく、柔らかく香る。
そうか、だから囁きなのだ。
そこがこの香りのポイント。
これがもし、香りの輪郭が明確で、拡散性のある香りだったら「囁き」にはならず「大声」になってしまうかもしれない。
この輪郭のぼんやりした、ふんわりした感じこそが図書館の中のひそひそ声にぴったりなのではないか。
そう思ったら、ぼくは急にこの香りに対する愛着が増したのである。

Notes

Vanilla, Woody Notes, Pepper, Cedar

ペッパーのようなスパイシーな香りが入っているにもかかわらず、そんなに刺激的ではなく、かといってヴァニラの甘さも控えめ。かといって、ウッディーな感じもそんなに強くない。
なんとも静かな香りである。


My Evalution

★★★★

あまりにも静かすぎて、物足りないと感じることもあるかもしれないが、静かな一日を過ごしたいけど、香りがないとちょっと寂しいという時にはピッタリの香りだと思う。