第291夜 Ani

甘くて瑞々しい香り

DATA

Name:Ani
Brand:Nishane
Lauched in 2019
Perfumer: Cécile Zarokian
100ml ¥34,100

My Episode

ニッチフレグランスファンの裾野を広げる役割を果たしているNOSE SHOPは、定期的に通っている香水屋さんだ。
そのNOSE SHOPでこの夏大幅は値上げが発表された。
まぁ、ぼくの場合、値上げされてもどうしても欲しいものは買ってしまう性格なのではあるが、やはり背に腹は代えられないところがあり、値上げ前に、気になっていた香りは購入しておこう!という気持ちになり、鼻息も荒く、お店に遊びに行った。
そこで、いくつか目星をつけていた香りがあったのだが、まったくそれまでノーチェックだった香りもいくつかあった。そのうちの一つがこのニシャネの「ANI」だ。
シルクロードの重要な交易都市として栄えたものの、いつしか打ち捨てられた古代都市のアニをモチーフにしたという香り。
だが、ぼくが何となく気になって試した時にまっさきに思い浮かべたのが、NOBILE1942の「La Danza delle Libellule(トンボのダンス)」だった。
そっくりなんである。
「La Danza delle Libellule(トンボのダンス)」はココナッツが入った甘い香りなのだが、この「Ani」にもココナッツが入っているの?と思ってしまうほどそっくりの香りだった。
だが、この「Ani」にはココナッツは入っていない。
じゃあ、なんでこのふたつはこんなにも印象が似ているのだろうか。

そこで、この二つの香りの構成を見てみよう。

「La Danza delle Libellule(トンボのダンス)」
Top notes: Red Apple, Bergamot
Middle notes: Cinnamon, Cedar
Base notes: Vanilla, Coconut, Musk

「Ani」
Top notes:Ginger, Bergamot, Pink Pepper, Green Notes
Middle notes:Cardamom, Black Currant, Turkish Rose
Base notes:Vanilla, Benzoin, Sandalwood, Cedar, Patchouli, Ambergris, Musk

共通点はBergamotとMuskのみだ。
それなのに、どうしてこのふたつはこんなにも近しい感じがするのだろうか?
実際にふたつを付け比べてみても、やはり似ている。
「La Danza delle Libellule(トンボのダンス)」の方がまろやかではあるが、やはりこの二つは非常に近い関係にある。
ただ、ラストが少し印象が変わってきて、ANIの方がパチョリの重さのようなものが出てくる。甘いみずみずしさはだんだんと落ち着いてきて、しっくりと肌に馴染む。
そこがこの「Ani」の面白いところ。一見爽やかに見せかけて、実はしっとりとしているのである。
この夏、ぼくはこの香りをヘビロテしていた。
夏にこそこの香りは大活躍するのだ。
暑さの中ではみずみずしさがより強調され、うだるような湿度の中でも香りによって少しさっぱりした気分にさせてくれる。
「La Danza delle Libellule(トンボのダンス)」もココナッツが入っているので夏の印象だが、甘ったるさが「Ani」よりも強く、夏の日差しを感じさせる。
来年の夏は「La Danza delle Libellule(トンボのダンス)」と「Ani」を交互にたくさん纏いたいと思っている。
そして、冬の日に夏の暑さや明るさが懐かしくなることがあったら、この香りを纏ってみるのも良いかもしれない。

NOTES

Top notes:Ginger, Bergamot, Pink Pepper, Green Notes
Middle notes:Cardamom, Black Currant, Turkish Rose
Base notes:Vanilla, Benzoin, Sandalwood, Cedar, Patchouli, Ambergris, Musk

トップのジンジャーとベルガモットとピンクペッパーによってこの香りは非常に瑞々しく感じられる。さらにブラックカラントがそれを支えている。だが、ベースのシダーやパチョリ、アンバーグリス、ムスクがきっとミドルからラストの重さの要因となっているのだろう。

これはたまたま偶然みつけた香りではあるが、すっかりぼくのお気に入りになった。

My Evalution

★★★★★

「La Danza delle Libellule(トンボのダンス)」も「Ani」も日本では超マイナーな香りなので、賛同者は少ないかもしれないが、とにかくどちらもぼくの好きなフルーティーな香りで、鼻腔にしっかりと記憶が残るほどの香りであることは間違いない。