第465夜 Bois des Sables

スパイス香る砂の森

DATA

Name:Bois des Sables(ボワデサブレ)
Brand:L'Artisan Parfumeur
Lauched in 2021
Perfumer:Christophe Raynaud
100ml ¥40,480

My Episode

香水にも旬というのがあるとぼくは思っている。
特に日本の場合はヨーロッパの国々と違って、四季の寒暖差が激しい。
近年では夏の異常な暑さのせいで、余計にその季節ごとの香り方がまったく異なっているように感じることが多い気がする。
例えば、寒い時期だと今一つだった香りが、夏の湿度の中では意外といける香りだったりすることもあるし、逆もまたしかり。
さて、今日ご紹介する「Bois des Sables」はまさにそんな季節に左右される香りだと思った。
この香りは昨年までは日本での取り扱いはなかったのだが、4月下旬、表参道にラルチザンパフューマーの旗艦店ができてから、やっと日本に入荷した香りのうちの一本である。
そして、その時にこの香水を含むすべてのオリエントシリーズを試したのだが、正直、その時はまだこの香りの良さに気付かなかった。
それから毎月のようにラルチザンに通い、そのたびに試してみたのだが、やはりなかなかこの香りの良さがわからなかった。
嫌いではないのだが、なんかこう、重く感じたんである。
そして、9月の下旬に香水好きの人と一緒に訪れて、改めて試してみたら、これがそれまでとはまったく違った表情を見せてくれたんである。
それがどういう香りなのかというと、確かにそれまで感じていたクリーミーな甘さはあるものの、それよりも、スパイスがより際立っていたのだ。
湿度のある暑い時期だと、ぼくの苦手なクリーミーな香りの方が勝っていて、そのピリッとしたスパイスがほとんど感じられなかったのだ。それなのに、少し気温が低くなり、湿度がやわらいでくると、その苦手なクリーミーさが鳴りを潜め、ぐっとウッディでスパイシーな感じが出てきて、より香りにくっきりとした輪郭が生まれる。
そうそう、ぼくが好きなのは、このキリッとした香りであって、決してだらっとしたクリーム感ではないのだ。
なんか、ベタベタしたクリーミーな香りって、甘さが加わるとぼくはもうトゥーマッチっていう感じになってしまうのだ。
だから、夏の間はどうしてもこの香りは受け入れることができなかった。
でも、やっと9月の下旬になり、その苦手なクリーミーさが落ち着いて、ぼくの鼻は素直にこの香りを受け入れてくれることができるようになった。
これですよ!これ!っていう感じで、ぼくはほぼ即決で9月の香水はこれ!って決めた。
まだまだ東京は湿度のあるムシムシした日が続いているのだが、きっとこれからその蒸し暑さがなくなると、もっとこの香りは綺麗に香ってくれるだろう。
ぼくはちょっとでも外が蒸し暑いとそれだけで全毛穴が拒否反応を示してしまうくらい湿度に弱い。例えば喫茶店でお茶をした後に外に出た時にその湿気具合がわかる。その時に、肌にまつわりつくようなべたべたした感じがなくなったら、やっとぼくの毛穴は安心して全開になる。
その感覚は恐らく普通の人は感じない感覚かもしれない。ちょっとでも湿度があるともう毛穴レベルで全否定をしてしまうから、今の時期はまだぼくの中では「真夏日」の連続。
今年は特にそれを感じていて、きっとこの感覚は10月下旬まで続くんじゃないかって戦々恐々としている。

 

NOTES

Gurujan balsam, Cedar, Vanilla, Cypriol Oil or Nagarmotha, Sandalwood, Vetiver, Labdanum, Patchouli, Agarwood(Oud), Guaiac Wood

FRAGRANTICAに掲載されているこのFragrance Notesを見て驚いたのだが、なんと、スパイスの要素がほとんどないんである。え?ぼくがスパイスだと感じたのはなに?っていう感じ。きっとこれらの香料の組み合わせによって、スパイスを感じるっていうことなんだろうなぁ。

My Evalution

★★★★

夏の時期はクリーミーさが出てしまうので、そこがちょっと残念ではあるけど、でも逆にそのクリーミーさがあるからこそ引き立つ木の香りとかスパイス感だと思うので、それもこみこみで受け止めないとって思っている。