第516夜 Not Vanilla

バニラの香りとは何か?

DATA

Name:Not Vanilla
Brand:BORNTOSTANDOUT(ボーントゥスタンドアウト)
Lauched 2022
Perfumer: Frank Voelkl, Florian Gallo

My Episode

基本的に甘い香りは好きだ。
グルマン系の甘い香りも好きだし、フルーティーでジューシーな甘い香りやアンバー系のお香のような甘い香りも大好物。苦手なのはお花系やおふくろさん系(いわゆるシプレ―と呼ばれる部)。あとの甘さはたいていいける。
だから、バニラももちろん守備範囲なのだが、ひとことでバニラといってもいろんなバニラの表現方法があって、それを比較するのもまた楽しい。
今日ご紹介する「Not Vanilla」は名前からしていろんな想像力をかきたてられる。
直訳すると「バニラではない」ということなので、バニラの香料を使わずにバニラを表現しているのか?それとも単なるバニラではないよ、ということなのか、タイトルだけだと頭が混乱してしまうので、とにかくこればかりは肌に載せなくては、と思って肌載せしてみた。
うん、確かにバニラの要素はしっかりと感じられる。でもそれは非常に柔らかい。バニラっていうと、割と自己主張の激しい「あたし、グルマン系代表なのよ!何か文句でもありますか?なんでも甘くしてやるわよ!お菓子やケーキの甘さが欲しかったら、あたしに任せてちょうだい!」的なところがあるのだが、この「Not Vanilla」はそういう自己主張がまったく感じられない。
「すいません、あの、あたし、バニラなんですけどね、ほんの香りづけなんですよ、今日は。だから他の香料の方たちを引き立てる役に徹したいと思っていますの、すいませんね。今回はちょっと許してちょうだいね。ひかえめなつもりでも、どうしても香料の特性上、前に出ちゃうかもしれないけど、あくまでもあたくし、添え物ですので、そこんとこ、よろしく」と前面にバニラの香りはそんなに出ていない。
ただ、やはりバニラらしい、ちょっと苦みを伴った独特のグルマン系の甘さはかすかに感じる。
「アフタヌーンティを楽しむ昼下がり」がテーマらしいのだが、確かにそういう優雅さのようなものは感じられる。アフタヌーンティで出されるちょっとした小さなお菓子にバニラが使われているという感じなのだろうか。
そこがこのバニラ香水のおもしろいところだと思った。

NOTES

Top notes:Camphor, Nutmeg, Bergamot
Middle notes:Vanilla, Juniper Berries, Cedar, Violet
Base notes:Praline, Cetalox, Musk, Guaiac Wood, Amber, Moss.

CamphorとかPralineといったあまり知られていない香料が出てきて、これはなんだろう?と思ったので調べてみた。

調べてみたら、Camphor(カンファー/カンフル)とは、クスノキ(楠)の木部から得られる、強い清涼感のある香りの結晶(日本語名:樟脳〔しょうのう〕)のことでカンフル剤の由来となっているみたい。シナモンカンファーというのもあるらしい。

プラリネ(praliné)とは、ローストしたナッツ類に加熱した砂糖を加えてキャラメリゼ(カラメル化)したもののことです。一般的には、それをすりつぶしてペースト状にしたものや、中に詰め物をした一口サイズのチョコレートを指すこともあります。

あ、プラリネだったら知っている。これこそグルマンの代表ともいえる香りだよね。と納得。

My Evalution

★★★

実はこの香り、バニラメインじゃないからなのか、非常に輪郭がぼんやりした香りだと思う。ぼーっとしているというか。甘いの?甘くないの?どっちなの!はっきりして!と叱り飛ばしたくなるような、そんなぼんやりした香り。そこがぼくには物足りないかなぁ。

第515夜 Sin & Pleasure

罪と快楽を香りで表現?

DATA

Name:Sin & Pleasure
Brand:BORNTOSTANDOUT(ボーントゥスタンドアウト)
Lauched 2023
Perfumer: Amelie Bourgeois

My Episode

何とも不思議な香りである。
甘さはあるんだけど、その他にもいろんな要因が詰まっている、そんな不思議な香り。肌の載せた時はちょっとツンとしたようなとがった香りがするのだが、それがだんだんと肌に沁み込んでくるとBTSOっぽい独特の甘さが出て来る。ところがそこから今度はパチョリの土臭い香りがしてくるんである。湿度を放つ大地の香りと言おうか…。あの雨上がりの感じが今度はラムのようなお酒の雰囲気を連れて来る。この変化がなんと5分ぐらいで感じられるんである。もうね、これは本当に面白い。
Sin & Pleasureとは、訳すと「罪と快楽」という意味で、罪を背負った快楽っていうのは、なんとも背徳的で、続々すると思うのだが、まさにそういう二面性を感じさせる香りでもある。
ラストの方はちょっとスパイシーな香りもして、非常に大人っぽい香りでもある。あと、海外に行った時にしばしば遭遇する香りはこんな感じかもしれない。日本ではあまり感じないような独特の苦みを伴った香り。
この香水をどんな場面でつけたいかと言われると非常に困る。
パーティーの時に纏うような華やかな香りでは決してないし、かといって一人の時間を楽しむような香りでもない。
ただ、日常的に纏うことで、なじんでいくような雰囲気はある。
拡散性はないけど、重い香りではあるので、意外と自分で楽しむのに使うのも良いだろう。一人でふらっと買い物に行った時とかに、デコルテあたりからこの香りが漂ってきたら、ちょっと海外のショッピングモールを歩いているようなそんな気分になれるかもしれない。


NOTES

Vanilla, Caramel, Rum, Almond, Patchouli, Agarwood (Oud), Sandalwood, Leather, Ylang Ylang, White Flowers, Oakmoss

バニラやキャラメル、アーモンドなどの甘さと、パチョリやウード、レザーといった重さのバランスがとても良いのだと思う。

My Evalution

★★★★

時間が経てば経つほど日本人には絶対に作れないような独特の香りだなというのがわかる。なかなか面白い。個性的だけど、目立つ感じじゃなくて、でも、しっかり自己主張はしている、そんな香り。

第514夜 Dirty Heaven

大人甘い香りはいかが?

DATA

Name:Dirty Heaven
Brand:BORNTOSTANDOUT(ボーントゥスタンドアウト)
Lauched 2023
Perfumer: Margaux Le Paih Guérin

My Episode

何度も書いているけど、BORNTOSTANDOUTはベースに独特の甘さというのがある。どれもこれも甘いのだ。それもびっくりするくらい。そして、甘さを追求すると、こういう面も出て来るのか!と驚いてしまうような甘い香水もある。
今日ご紹介するこのDirty Heavenもまさにそんな甘さ全開の香り。
肌載せしたとたんに、グルマンな甘さが肌の上から立ち上る。それがもう、本当に美味しそうでありながらも、上品なのだ。これ、下手な安い香水で作ると、絶対にベタベタしちゃって、こんな感じには仕上がらないだろう。それを見事に昇華させているところが、このブランドの凄さ。
単なる甘いだけにとどまらず、それがしばらくすると、ちょっとしたひねりを感じる香りが加わる。甘いの向こうにある渋みというか、辛みとまではいかないけど、ちょっと甘さとは違うザラっとした感覚。それも甘いを追求するからこそ感じることができる辛さがあるのである。
Dirty Heavenというネーミングもまた面白くて、その甘さと辛さのようなものの対比をこの名前に託しているのかなと思う。
これぞまさしくBORNTOSTANDOUT的な香りと言えるんじゃないだろうか。

NOTES

Jasmine, Neroli, White Flowers, Tonka Bean, Saffron, Ambroxan, Vanilla, Amber

甘さの源はトンカやアンバー、バニラだろう。そして、その他の部分でちょっとした辛さのようなものを加えているのだろうか。

My Evalution

★★★★★

甘い香りを求めている人にはぜひこれは試して欲しい。本当にすごいから。そしてその甘さもちょっと大人っぽいんだよね。個人的に大好きな甘さ!

第513夜 Wabi-Sabi

甘オリエンタルな香り

DATA

Name:Wabi-Sabi
Brand:BORNTOSTANDOUT(ボーントゥスタンドアウト)
Lauched 2024
Perfumer: Margaux Le Paih Guérin

My Episode

BORNTOSTANDOUTは、いろんなお店とのコラボ商品を出していて、例えばイギリスのハロッズ限定の香水なんかもあって、コンプリートしたいと思っているぼくにはなかなかハードルの高いブランドではある。
今日ご紹介するのは日本では初のコラボとなる〈bPr BEAMS(bPr ビームス)〉との別注香水。
だから、ぼくはわざわざ原宿のBEAMSまでこれを買いに行ったのだ。
Wabi-Sabi(詫び寂び)というタイトルはもろジャパニーズなんだけど、韓国のブランドで、さらに調香師はフランス人。となるとその詫び寂びをどう表現するのかが気になるところだった。
でも、考えてみたら、生粋の日本人であるぼく自身も「詫び寂びをテーマにした香りを作れ」と言われたら、どんな香りを作ったら良いのか迷うところだろう。
ただ、なんとなくではあるが、日本人の考える詫び寂びと日本人ではない人たちが考えるそれとは、当然のことながら異なるのではないだろうか。
さて、肌載せしてみると、なんとも不思議な香りである。BTSO的な甘さをしっかりと感じるんだけど、どこかオリエンタルな雰囲気もあって、あぁ、なるほど西洋人の考えているオリエンタルって、こういう感じなんだって妙に納得してしまう。
例えば、フローリングの床に畳を置いてその一角だけ和風のインテリアにしちゃうとか、そういう感じね。
日本人はあまりそういう発想はしないけど、西洋人ならそういうのやりかねないよね。でもぼくはそういうのも好きだから、全然問題ないんだけど。
それにしても、BTSOってやっぱり独特の甘さというのが根底にああって、これだけたくさん持っているとそのベースの香りをしっかりと鼻がキャッチできるようになり、それがまた一つのブランドを追求する面白さだなと思っている。

NOTES

Top notes:Jasmine, Saffron, Black Currant
Middle notes:Frankincense, Hinoki Wood, Cypress, elemi
Base notes:Ambergris, Woody Notes, Ambroxan, White Musk, Vanilla

オリエンタルな要素は、ジャスミンやヒノキからきているのかな。あとはやっぱり独特の甘さを感じる香料が多く、なるほどとこれを見て腑に落ちた。

My Evalution

★★★

うーん、悪くはないんだけど、そんなにしょっちゅうつけるか?と言われると困る。派手さはないので、添寝香水にちょうど良い感じ。まさにそこが詫び寂びなんだろうか。

第512夜 Hinoki Shower

ヒノキってこんなに甘かったっけ?

DATA

Name:Hinoki Shower
Brand:BORNTOSTANDOUT(ボーントゥスタンドアウト)
Lauched 2022
Perfumer: Hamid Merati-Kashani

My Episode

日本人にはなじみのヒノキの香り。でも、日本人の感覚と、西洋人の感覚は全然違うんだなということがわかるヒノキ系香水だと思う。
肌載せした時、「あ、確かにヒノキの香りする!」って思うんだけど、すぐに「ん?ちょっと違うぞ?」ってなる。ヒノキの香りって、基本的にそんなに甘さはないじゃない?木の独特のほんのりとした甘さというのはあっても、そんなにベタっとした解り易い甘さはないと思う。
しかし、この「Hinoki Shower」は、そういう乾いていない甘さ、ちょっとベタベタした感じの甘さが漂ってくるのである。でもその甘さを言語化するのってちょっと難しい。
グルマンっていうのも違うし、フルーティーっていうわけでもないし、フラワリーでもないし。一体どんな甘さなのか、全然わからないまま肌載せしているのはなんとも中途半端な気持だ。
でも、日本人だったら絶対にこういう香りには仕上げないよな、という感想だけありつつも、確かに肌載せした瞬間にヒノキの感じはするので、そこはなかなか面白いと思った。

NOTES

Top notes:Cypress, Pine, Camphor
Middle notes:Cedar, Woody Notes, Thyme
Base notes:Tobacco, Moss, Vetiver

この中からでは甘さの原因を突き止めることができないが、いずれも緑系の香りであることから、樹液とかそんな感じの甘さなのかもしれない。

My Evalution

★★★

木の香りそのものは好きなんだけど、これはちょっと甘さが強くて、あまり使わないかもしれない。

第511夜 Sex & Cognac

クリーミーで渋めの革の香り

DATA

Name:Sex & Cognac
Brand:BORNTOSTANDOUT(ボーントゥスタンドアウト)
Lauched 2022
Perfumer: Hamid Merati-Kashani

My Episode

直訳するとセックスとコニャック。
何ともダイレクトに艶めかしい名前だ。
お店で「セックスアンドコニャックください」と言うのもちょっと恥ずかしくなる若人もいるはず。笑笑
そんな香水 Sex & Cognac は、まさにその名にふさわしく、艶めかしい香りではある。
肌に載せた瞬間にまるっとした、というか、とろんとした香りが漂ってくる。香りにとろみを感じるのである。そこが艶めかしく感じる要因なのかもしれない。
あと、下戸だから、余計にお酒の感じを敏感に感じ取ってしまうところがある。まるみを感じるというのが、そのお酒独特の甘さというか、そういうアルコール感なのかもしれない。
コニャックなんて(数えるほどしか飲んだ…というか舐めた)、まさにこういうとろりとした香りだったような記憶。
肌の載せた途端にとろみのある独特の香りがするのだが、時間が少し経ってくると、そのとろみの他に少し渋い香りも漂ってくる。煙っぽい雰囲気もありながらも、レザーの感じがするのだ。そこが渋い。
まぁ、名前からしてセックスとコニャックだからね、渋くないわけがない。そういう意味では名前通りの香りと言えるだろう。
そういう香りにありがちなのが、ちょっとグリーンみも感じられるところ。ただ、スモーキーな感じとレザーな感じの方が強いので、気になるっていうほどではないかなぁ。

NOTES

Top note:Saffron
Middle notes:Leather, Papyrus
Base notes:Cognac, Laotian Oud

ウードはなんとなく入っているだろうな、という感じ。この重さはウードによるものだろう。サフラン、レザー、パピルス、コニャック、ウードなんて、まさに大人っぽい香り全開ではないですか!

My Evalution

★★★★

この丸みのある香りは夏よりも冬向きかな。ただかっさかさな煙感もあるので、夏でも意外といけるかもしれない。

第510夜 Mud

淡くて甘くて儚い香り

DATA

Name:Mud
Brand:BORNTOSTANDOUT(ボーントゥスタンドアウト)
Lauched 2022
Perfumer: Nathalie Lorson

My Episode

Mudとは、泥とかぬかるみという意味があるのだが、英語のスラングでは「さっぱりわからないこと」とか「堅物でつまらない人」というようにあんまり良くない文脈で使われることが多いようだ。なぜ、この香水にそんな名前をつけたのか、ちょっとわからないので、調べてみたら、これは別にそういうスラングの意味でつけたわけではなく、純粋に「雨でぬかるんだ大地」をイメージした名前なのだそうだ。
では、この香りはちょっとアーシーだったり、グリーンだったり、あるいは雨に濡れた土を思わせるパチョリのような香りだったりするのかというと、これがまた正反対!
実に甘くてとろっとした香りがするんである。
かといってこの甘さが何の由来の甘さなのかがちょっとわかりにくい。チョコレートやバニラみたいなお菓子系(グルマン)なのか、ピーチやストロベリーみたいな果物系(フルーティー)なのか、バラやイリスのような花の甘さ(フラワリー)なのか、あとはお線香のようなアンバー系なのか、ひと言では言い表せないような甘い香りがするんである。
実に絶妙なバランスですべての甘い香りが淡く漂っている、そんな印象を持つ。
BTSOの香りってわりと輪郭がはっきりとした香りが多い気がするのだが、この香りに関しては輪郭がぼやけている。
甘いのか、甘くないのか、どっちなんじゃい!と言いたくなるような、そんな感じがするのだ。

NOTES

Top notes:Milk, Almond
Middle notes:Chocolate, Plum, Turkish Rose
Base notes:Vanilla, elemi, Sandalwood, Amber

甘さの要因は、ミルクやアーモンド、チョコ、バニラといったグルマン、プラムのようなフルーツ、そしてバラのフラワー、アンバー系のお線香のような甘さというように、いろんな要素が組み合わさっているのがわかる。それぞれが主張をせず、程よい距離感で絡み合っているので、それを楽しむには良いだろう。

My Evalution

★★★★

ぼくはどちらかというと輪郭のあるパキッとした香りの方を好むので、これは非常に微妙だけど、鼻が疲れているけど何か纏いたいという時にさっと纏うには良いかもしれない。