第473夜 L'Ibasho

異国の地で自分の居場所を考える

 

DATA

Name:L'Ibasho(イバショ)
Brand:Maison de L'Asie(メゾンドラズィ)
Lauched 2025
Perfumer:Antoine Lie
75ml ¥55,990

My Episode

自分のいるべき場所は一体どこなのだろうか?日本を離れているからこそわかることもある。旅をするのは、自分の居場所の再確認なのかもしれない。

シンガポール発のブランドMaison de L'Asie メゾンドラズィは、今年日本に上陸したばかりのブランドだ。シンガポールのブランドというのは珍しいし、ぼくの好きなインドネシアやタイをイメージした香りがあるというので、非常に気になっていた。
伊勢丹の1階で何度か試してみたのだが、確かにどれも南国を思わせる香りで非常にユニークだったので、いつか買おう買おうと思いつつ、昨今の香水の価格高騰から、まだ購入出来ないでいる。
さて、そんなメゾンドラズィから、サロパ限定の香りが出るというので、発売前に売り場に行って試してみた。

Guns of Sakura
L'Ibasho

といういずれも日本をモチーフにしたという香りが出たので、どちらも試したのだが、Guns of Sakuraはぼくの苦手なメタリックが前面に出ていて、鼻が拒否反応を示したので却下。(でもサロパではこちらが完売したらしい)
もう一方のL'IBASHOはその正反対で、温かみのある甘い香りで、こちらの方がぐっとつけやすいと感じてすぐにこちらを予約した。

そして、サロパでも購入前に試したのだが、やはり、良い。トップから暖かいナッティな香りがして、ほっこりした雰囲気が自分の肌から漂ってくるのだ。ぼくは基本的に重い香りが好きなのだが、甘さがないと物足りなさを感じてしまう。そういう意味でも、このL'IBASHOは甘さも感じる乾いた香りがして、非常に良い。
ところが、この香りの面白いところは、その甘さの中に、ちょっと苦さを感じるところ。何かを炒った時に発するような香り。本当にちょっとだけなのだが、そんな感じがするのである。
これはとくに秋から冬にかけて大活躍してくれるだろう。パウダリーな感じもするので湿気対策として、除湿香水で使えそうな気もするが、ちょっとそれにしては甘いかなという印象。

NOTES

Top notes:Japanese Cherry Blossom, Turkish Rose,Cherry
Middle notes:Rice,Ink
Base notes:Orris, Talc,Patchouli

絶対にナッティな成分(ヘーゼルナッツなど)が入っているかと思ったら、公にされている情報の中には入っていなくて驚いた。恐らくライスとかタルクがその役割を果たしているのだろう。そして、ぼくがこの香りに惹かれたのは「Ink」なのかもしれない。この場合墨を差すことが多いのだが、東洋的なイメージを形作るのに必要な成分なのだろう。

My Evalution

★★★★

とにかく優しくて甘い香りに飢えている人には最適。最近ちょっとぼくも重い香りばかりをつけていて、鼻が疲れ気味だったから、こういう優しい香りに癒されたくなった。

 

第472夜 Serendipity

香港で思いがけない幸運に出会う

 

DATA

Name:Serendipityセレンディピティー)
Brand:TOBBA
Lauched 2023
Perfumer:Jasper Li
10ml ¥7,975

My Episode

次の目的地である香港で、思いがけない香りと出会った。すっきりとしたアロマティックな香りの中に甘辛いシナモンを感じる。これぞまさしく「Serendipity(思いがけない幸運な偶然)」


EDIT(h)のオーナーである葛和さん率いるチームの中に香港の若い男子二人がいることは昨年のサロパでも知っていて、その時に彼らとも話をしたのだが、実はまだぼくはそのブランドの香水のことはあまりわからなかった。
去年は特にぼくの鼻腔は例年のごとくウード仕様になっていたものだから、TOBBAの香水を始め、初上陸と呼ばれる香りはどれもやさしく感じられてしまい、鼻が反応しなかったのだ。
でも、今年は実はサロパが始まる前から自分で決めていたことがある。それは「ウードに惑わされない」ということ。ウードの入っている香水を100本以上も集めていると、だんだんと麻痺してしまい、似たような香りも中にはあるし、それほど自分の鼻に響かない香りも少なくない。
だから、今年は「ウードが入っているから」という理由だけで購入するのはやめようと思ったのだ。
だって、今回のサロパに登場するウードの入っている香水を調べたら、10本以上あるし、お値段もそれだけで50万を超えるのである。絶対に無理。
だから、ウードだから、とか限定だからという理由に振り回されることなく、その代わりどのブースもまんべんなく周り、本当に鼻腔が喜ぶ香りだけをお迎えしようという気持ちになったのだ。
そんな気持で臨んだサロンドパルファンで、ぼくの鼻が反応したのは、このSerendipityである。まず、名前からして良いではないか。
セレンディピティーとは、偶然訪れた幸運というような意味で、このタイトルで映画も作られて、ぼくはその映画が大好きだったりもしたので、気になった。
昨年も並んでいたはずなのだが、なんせウード、ウードと呪文を唱えている鼻には響かず、そのままスルーしていた。
でも、今年はしっかりとその良さをとらえられたんである。
トップはすっきりとした香り。アロマティックな雰囲気もある。シナモンもそんなに強くはないが、ほのかに香っている。わりとそのすっきり感はずっと最後まで続くので、例えば初対面の人と会う時などにさっぱりとした気持でつけると良いのではないだろうか。

NOTES

Top notes:Nutmeg, Saffron,Cinnamon
Middle notes:Sandalwood,Salt
Base notes:Vanilla, Musk, Benzoin, Tonka Bean,Labdanum

トップが柑橘系のアロマティックな匂いがするのだが、香料を見てみるとそれらの要素は入っていない。きっと明かされていない中にあるのかもしれない。

My Evalution

★★★★

香水にまだあまり親しんでいない人、あるいはぼくのように濃い香水ばかりを好んで付けているけど、たまに気分転換に軽い香りをつけたい人にもおすすめ。

 

第471夜 Erotikon

チェコでチョコをちょこっと食べて

 

DATA

Name:Erotikon(エロティコン)
Brand:Pigmentarium
Lauched 2019
Perfumer:Jakub F. Hiermann
10ml ¥12,100

My Episode

気づいたら、ぼくは次の目的地であるチェコの喫茶店でおいしいチョコレートを食べていた。抗いがたい魅力の甘い香りはぼくを惑わせる。

EDIT(h)のオーナーである葛和さんとは数年前からのお付き合いなのだが、実はEDIT(h)の香水ってぼくにとってはどれも優し過ぎて、あまり持っていない。そのことは葛和さんも良くご存じで、「ケンさんにはうちのはちょっとまだまだなんだよね」と言われて、そのたびに、「早く重いのを作ってよ」ってお願いしていた。
ところが、そんな葛和さんが世界の香水の展示会などで知り合ったブランドを日本に引き連れてきたのが昨年のサロンドパルファンだった。
でも、その時ぼくは遠目で見ているだけで、きっとまた日本人向けの優しい香りばっかりなんでしょ?と思ってあまり関心を持つことはしなかった。
昨年のサロパは、自分の追い求めている重い香りがたくさんあったので、それだけでお腹いっぱいになってしまって、他のブランドを回る余裕がなかったというのもある。
しかし、今年、葛和さんにお会いした時に「ケンさんに認めてもらえるようなブランドを連れてきましたよ」と紹介されたのがチェコのピグメンタリウムというブランドだ。
実際に試してみたら、これがまた確かになかなかユニークなのである。
特にぼくが最初に気になったのが「EROTIKON」という香り。チョコレートの香りがベースにあるグルマン系なのだが、ベタベタした感じではなく、もっとすっきりと楽しめる構成になっている。
独特の酸味というか、すっきり感があって、そこがこの香水の個性なのだろう。
なるほど、葛和さん、なかなかやるじゃない(でもEDIT(h)でもぼく好みのガツンとしたのを作ってよ!笑笑)
しかも、フルボトルではなく10mlもあるので、まずはこれでたっぷりとお試しして、さらに追い香水したかったらフルボトルにしようと思っている。

NOTES

Top notes:Chocolate, Ginger, Pink Pepper
Middle notes:Vanilla, Tonka Bean
Base notes:Patchouli, Sandalwood, Amber, Musk

トップからのチョコレートだが、ジンジャーやピンクペッパーによってベタベタ感が少ないのだろう。程よい甘さは少し煙たさも伴っていて、それはベースのアンバーによるものだとわかる。
個性的でありながらも、奇をてらっていないところも好感が持てる。

My Evalution

★★★★

グルマンをつけたいけど、そんなにベタっとしたのではなく、すっきりとしたグルマンがいいというような時にこれは良いだろう。例えば誰かと一緒に食事に行くときに最適かも。

 

第470夜 Midnight in Istanbul

イスタンブールでお茶を

DATA

Name:Midnight in Istanbul(夜のイスタンブールで会いましょう)
Brand:5W1H
Lauched 2025
Perfumer:Mayumi Nakada(中田真由美)
10ml×3 ¥14,300

My Episode

夜のイスタンブールで会いましょうと誘われて、訪れたバザールで飲むチャイは、シナモンの効いた甘辛いミルクティーでした。

シナモンが好きだ。もともと香水にはまる前からぼくはシナモンのような甘辛い香りが好きで、お香とかもシナモン系の香りが好きだった。だから、香水にはまりたての時も、売り場で好きな香りを聞かれた時は「スパイス系が好き」と答えることが多かった。
でも、スパイスにも色々あって、例えばクローブのような香りだと、かなり香辛料感が強くて、嫌いじゃないけど、時々辛く感じることがある。
そうなるとぼくの鼻腔は閉じてしまうのだ。
つまり、どういうことかというと、辛いだけではだめってこと。そこに甘さが少しでも加わらないと、ぼくの鼻腔は喜んでくれないのだ。
だから、シナモンが好きなんだと思う。
シナモンはスパイスの中でもかなり甘さを伴っているから。その甘さがあるから、安心してシナモン系の香水を纏えるのである。
クリスマスの時期にこのブログでもシナモン系の香水を集中的にご紹介したことがあるのだが、今またそんなシナモンの香りを欲していて、やはりこれは寒い時期だからこそ鼻が欲するのではないかっていう気がしている。
SNSを見ていて、メンズ館に来ている5W1Hのセットの中のシナモンがやばいという話題が出ていて、ぼくはもういてもたってもいられなくなり、2日目に訪れた。
ブランドオーナーでもあり調香師でもある中田さんとも数年来のお付き合いで、以前にも彼女の作った木の香りを購入したことがあるのだが、今回はぼくの好きなシナモンを作ったということで、すごく期待して会いに行った。
そして、いつもパワフルで楽しい彼女の話を聞きながら試させてもらった、イスタンブールで会いましょう。
思った以上にザ・シナモンで、ムエットだけでも、そうとうシナモンが感じられた。こんなにストレートにシナモンなのは珍しいんじゃないかっていうくらいシナモンなのだ。
シナモンは実は苦手な人もいるので、難しい香料ではあるけど、日本だとニッキ水でなじみがあるし、あの有名な八つ橋なんかでも使われているので、日本人にも本来はなじみのある香料のはず。
ぼくがなんでこんなにシナモンが好きなのか自分でもその源流を思い出せないのだが、気付いたらシナモンが好きになっていた。
ひょっとしたら子どもの頃に外国で食べたシナモンガムなどに影響されているのかもしれない。
閑話休題
このイスタンブールで会いましょうは、とにかくシナモンから始まり、シナモンで終わるのだが、カルダモンや生姜や茶葉なんかも入っていて、しばらくすると、それらの香りがほんのりと漂ってくる。ただ、とにかく最初から最後までシナモンはしっかりといるので、シナモンが好きな人は絶対にマスト。
ぼくは中田さんに思わずフルボトルをお願いしてしまった。さらに、シナモン3種で作ってみるのも良いのでは?という提案。このシナモンをベースにミルクティー、ウード+シナモンみたいなのも面白いんじゃないかと。
中田さんもいろんな人からフルボトルをお願いされているらしくて、いつかそれらが実現すると良いなと思っている。
他のミントやジャスミンなども良い香りだったので、それらも使いながら、フルボトルを待ちたい。

NOTES

Top notes:Cardamom,Black Tea, Sugar
Middle notes:Ginger, Tea, Black pepper
Base notes:Cinnamon, Milk, Honey

ベースのシナモンがトップからこれだけがつんと香るのは、多分バランスの問題なのかな。とにかくもう、シナモン好きには絶対に試して欲しいよ。

My Evalution

★★★★★

フルボトルが出たら、真っ先に買うと思う。それまでこの10mlを惜しげもなく使おう。ありそうでない感じのシナモン香水。前述したようにシナモンは好き嫌いが分かれるけど、好きな人は絶対にハマると思うんだよねぇ。ぼくみたいに!

#香水 #千一夜香水物語 #サロンドパルファン2025 #千一夜サロパ香水紀行

第469夜 Dirty Milk

焦がしたホットミルクはいかが?

DATA

Name:Dirty Milk
Brand:BORNTOSTANDOUT(ボーントゥスタンドアウト)
Lauched 2025
Perfumer:Gaël Montero
(ガエル・モンテロ)
100ml ¥33,000

My Episode

古代メソポタミア文明の都市バビロンから始まり、インドの都市ジャプールで朝6時を迎えた後、訪れたのは韓国。ここでもまたミルクを味わうことになる。

では、それがどんな香りかを、分析していきたい。

目立つために生まれて来た、「BORN TO STAND OUT」を体現するような香水の数々を次々と発表している韓国発のブランドは今ぼくが一番注目しているブランドだ。
もう数年前に日本には上陸しており、この秋から伊勢丹メンズ館での常設の取り扱いが始まったのだが、伊勢丹で開催されているサロンドパルファンに登場するのは初めて。
ぼくはとにかくこのブランドは箱推しするほど好き。どの香りもとにかく個性的でユニークなのだ。つまらない香りがひとつもない。
まさにぼくが求めていた面白い香りを、惜しげもなく次々と出してくる。
オーナーのジュンとは一度だけ日本初上陸のお披露目でお会いしたことがあるのだが、背の高い物静かな感じのイケメンで、こんなに尖った香水をクリエーションするような人とは思えなかった。その時は遠くから見ているだけで、ゆっくり話機会がなかったのだが、今度会った時にはじっくりと熱く語りたいと思うほど、魅力的なブランドなのだ。
さて、そのブランドから先行品が出るというので楽しみにしていたのがこのDirty Mikl。
調べてみたら、なんと調香師が先日ご紹介したMONTBLANCの「Star Oud」を作ったガエル・モンテロ。
ここで繋がった!っていう感じでぼくはすごく嬉しくなった。
基本的にぼくはあまりミルクの香料は好きではない。良くFUEGUIAなどでミルクが使われるのだが、なんだかぼくには赤ちゃんの涎みたいな感じがして、敬遠していたのだ。
でも、例えばチャイのようにスパイスが加わっていたりして涎っぽくないミルクは好きなので、一概にミルクNGというわけでもない。
さて、このDirty Milkもまたぼくの好きな系統のミルクだ。涎臭ゼロ!笑笑。
どんなミルクかというと、ちょっと焦がしバニラのような辛さがあるのだ。
甘いんだけど、辛いみたいなドライな雰囲気がある。だから、赤ちゃんどころか、ちょっとビターな大人のホットミルクっていう感じなのだ。

NOTES

Top notes:Caramel, Black Pepper, Milk
Middle notes:Condensed Milk, Akigalawood, Iris, Cashmeran
Base notes:Vanilla, Tonka Bean, Musk

このノートを見て、あの焦がした感じがキャラメルであることを知り、なるほどって思った。そしてブラックペッパーがそこにさらに追いスパイスをしているんだなぁ。やっぱり個性的で面白いって思った。

My Evalution

★★★★

基本的にミルクって、ぼんやりした感じのものが多いけど、このミルクはやはりBTSOだけあって、刺激的で個性的で独創的でぼくの好みだなって思った。ちょっと自分を奮い立たせたい時とか、目立ちたい時なんかに良いかも。ウードとかレザーのような重さとはまた違った個性を演出できるので意外性もあるかな。今度二丁目のゲイバーに行くときにつけていって反応をみたいところ!

10月10日にイギリスのデパート限定で発売されたウードシリーズがなぜかサロパに登場したので早速ゲット。どちらも甘めウードなので、ぼく好みだったし。そして、夏に買いそびれた透明ボトルの1本も購入出来て大満足の旅行となりました!

第468夜 Jodhpur 6AM

インドの朝食でミルクティー

DATA

Name:Jodhpur 6AM
Brand:L'Entropiste(ラントロピスト)
Lauched 2025
Perfumer:Bertrand Duchaufour
(ベルトラン・ドゥショフール)
50ml ¥39,600

My Episode

古代メソポタミア文明の都市であるバビロンから始まった千一夜サロパ香水紀行の次の場所は朝6時のインドの都市ジャドプール。

さて、それはどんな香りなのか紐解いていくことにしよう。

調香師の中でぼくが一番好きなベルトラン・ドゥショフールが自身のブランドを立ち上げて、そこから個人輸入をして恐らく日本最速のレビューを書いたのが7月のこと。日本でもどこか代理店がつかないかなと思っていたら、なんと、NOSE SHOPが名乗りを上げたらしく、サロンドパルファンで初お目見えということで、初日に早速伊勢丹メンズ館に行ってみた。
今回は50mlのみで、種類は
Altamura
Dawn Whispers
Dorian's Spleen
Jodhpur 6AM
Semece Douce
の5種類と、2mlずつ入っているディスカバリーセットだ。
Blanc Sadaは阿部定をモチーフにしているから、絶対に入ってきてほしかったのだが、今回のサロパには間に合わないようで、本発売の時に入って来るとのこと。なお、今は50mlだけだが、その時に100mlも取りそろえるということだった。

さて、ぼくはすでに3本は本国から取り寄せたのだが、じゃあ、次にサロパで何を購入しようかと考えた時、一番しっくりときたのが「Jodhpur 6AM」だ。

ジョードプルとは、インドの都市の名前である。Wikipediaによると、旧市街の家屋の壁が青く塗られていることから、ブルーシティーと呼ばれているらしい。宮殿や霊廟などもあるようで、砂漠の入り口とはいえ、なかなか魅力的な街のようだ。そんなインドの古代都市の街で朝起きて、飲む紅茶をイメージしてようなのだ。
今まで、ベルトランの香水をかなり集めてきているが、お茶をメインにした香水って、あまりないような気がして、さらにインドの都市をモチーフにしているんだったら、サロパの「旅」というテーマでもリンクするではありませんか!
もう、これは期待するしかなく、本館をある程度見て回った後、メンズ館に移動し、早速試してみたのだが、もうこれが、本当に素晴らしい香り。なんで3本と一緒に頼まなかったんだろうと後悔してしまうほど、良い。
トップはとにかくチャイ。すぐにお茶の香りだとわかる。そしてスパイシーなのだが、それもシナモンのようなスパイスとはまた少し違って、ちょっとクリーミー。さらにそのスパイスは5分ほど経つと落ち着き、今度は南国の花の雰囲気が漂ってくる。
まさ、インドのホテルのレストランで朝食を食べている時に、どこからともなく漂ってくる南国の花の香り、というイメージなのだ。
調べてみたら、これはチュベローズの香りなのだが、そんなに濃くはない。愛香家の中にはチュベローズの香りが苦手という人も少なからずいるが、そういう人でも、このチュベだったら、やさしく香るので、受け入れられるんじゃないだろうか。
そして、時間がもっと経つと、すっかり香りが肌になじみ、クリーミーな甘さが残り、スパイス感はひっそりと隠れる。でも、たまぁに、どこからから顔をのぞかせるところが面白く、この香りはそういう意味でもベルトランらしい楽しさにあふれている香りなんじゃないかと思う。

NOTES

Black Tea, Tuberose, Spicy Notes. Cardamom, Ginger, Milk, Fruity Notes

このノートを見て、フルーティーノートがあるから、いろんなとがった感じの香りが中和されるのではないだろうか?という気がした。

My Evalution

★★★★★

インドの朝をイメージした香り。もうそれだけで、ロマンティックな気持ちになれるし、実際に肌に載せると、そんな気分まで味わえちゃう。本当に面白い香りだなぁと思う。これからの季節も良いだろうし、夏の暑い時期でもインドの朝をモチーフにしているんだから、似合うに違いないって思っている。

#香水 #千一夜香水物語 #サロンドパルファン2025 #千一夜サロパ香水紀行

第467夜 BABYLON

旅の始まりは甘辛スパイシーな香り漂う古代都市から

DATA

Name:BABYLON(バビロン)
Brand:Penhaligon's(ペンハリガン)
Lauched 2019
Perfumer:Christophe Raynaud(クリストフ・レイノー
100ml ¥42,350

My Episode

旅の始まりとしてぼくが選んだのは古代メソポタミア文明の都市バビロン。ここからどんな香りの旅が始まるのだろうかとわくわくしながら、幻の都市に足を踏み入れてみた…。

2025年のサロンドパルファンのテーマは「旅」。
会場内に入ると、飛行機の窓を模した壁紙があったり、時刻表のような案内掲示板があったりして、まさに会場そのものが旅を想起させる仕様になっている。
そして、ぼくが旅の出発点として選んだのが、ペンハリガンの「バビロン」である。
これは2019年にハロッズのみで発売された香りで、今回のサロパでしか販売しないという超レアな限定品。
でも、ぼくの今年の目標は「限定だからという理由だけで買わない」なので、もしこれが自分の鼻の羅針盤に引っ掛からなかったら、買おうとは思わなかっただろう。
ところが、事前に売り場で試させてもらったら、ビンビンと鼻の羅針盤が反応したんである。
そして、肌載せをしたら、もう完全に虜になった。
あぁ、これはまさにぼくの好きな系統の香りだなと確信できた。甘くてスパイシーでちょっとクリー三ー。肌に載せたとたんに異国に誘ってくれる。そんな感じがしたのだ。
Babylonとは、古代アッカド語の「Bāb-ilim」で、「神の門」を意味する。そして、古代メソポタミア文明の主要な都市のひとつであるバビロニアの首都の名前に由来している。
まさに、旅の出発点としてはぴったりではないか。
そして、ぼくがこの香水を選んだのにはもう一つ理由がある。
それが調香師。なんと、Bablylonを手掛けたのはChristophe Raynaud(クリストフ・レイノー)なのだ。クリストフ・レイノーといえば、最近ではラルチザンのオリエントコレクションをすべて手掛けている。つい先週も「Bois des Sables」を購入したばかり。そんなこともあり、この千一夜香水紀行を始めるのに、彼の手掛けた「Babylon」をお迎えするのは理にかなっているのではないかという結論に達した。
ちなみに、彼はぼくが持っている中ではドルガバの香水も手掛けている。

 

1001perfumenights.hatenadiary.jp

さて、そんな彼の紡ぎ出す古代都市の香りは、とても美しい。ぼくの大好きなスパイスが感じられる。シナモン好きな人(香料を見ると入っていないんだけど)にはたまらないんじゃないだろうか。
そして、ちょっと乾いた感じも良くて、肌にもすっとなじむところもまた魅力だ。

NOTES

Top notes:Nutmeg, Saffron, Coriander
Middle note:Cypriol Oil or Nagarmotha
Base notes:Vanilla, Sandalwood, Cedar

トップはシナモンが入っているのか?と思うほど甘辛スパイシーなのに、しばらくすると、そのスパイスは静かになり、今度漂ってくるのがバニラの甘さだ。それがとても上品。エキゾチックな香りからすっとクリーミーなバニラへと変化するところが面白い。普通こういう系統の香りって、お線香のようになったり、あるいはウッディに重くなってりしがちだけど、これはそういう系統には当てはまらない。強いて言えばグルマンかなぁ。でも、それもベタベタというわけでもない。さらっとしたテクスチャーのクリームとでも言おうか。

My Evalution

★★★★★

肌に載せた瞬間は好き好き!でもありがちな甘々スパイス?って思いがちだが、時間が経つにつれてそれが薄まり、余韻を残しつつバニラの甘さが出てきて、そこがね、非常に面白い。例えば夜出かける時につけると、家を出る時はキリッとした香りなのに、お店に着く時にはぐっと甘く落ち着くので、非常に纏いやすいんじゃないだろうか。

追記:ペンハリガンは特典がゴージャス。大きくて厚手のトートバック、スカーフ、創業当時に使われていたポスターの復刻版のポストカード、そしてそのポスターそのものが特典としてついてくる。大きな伊勢丹の紙袋に入れられたので、会う人ごとに初日なのにそんなに買ったの!?と驚かれてしまった。笑笑。

入口の飛行機の窓枠を模した場所で写真を撮り、ボトルの写真を合成しました。