第429夜 Altamura

フルーティーグリーンからのインセンスとレザーの香り

 

DATA

Name:Altamura
Brand:L'Entropiste
Lauched in 2025
Perfumer:Bertrand Duchaufour
日本未発売

My Episode

ぼくが最も敬愛する調香師であるベルトラン・ドゥショフールが、満を持して立ち上げた自身のブランドL'Entropisteの公式サイトから直接頼んだ3本のうちの一本が今日ご紹介する「Altamura」だ。調べてみたら、これはイタリア語で「アルタ=高い」「ムーラ=壁」という意味で、イタリアの小都市の名前でもある。
公式ホームページなどを見てみると、どうやらこの香りは宇宙と関係があるらしくて、そのあたりのことはちょっと詩的で理解しにくいのではあるが、宇宙の神秘や宇宙の息吹の輝きを表現しているらしく、なかなかこれもまた謎めいている。
ぼくがこの香りをブラインドバイした理由は、ただひとつ。インセンスが入っていたから。あとジュースの色が濃かったので、恐らくぼく好みの濃い香りだろうと思って頼んでみたのだ。
さて、肌に載せてみて、ぼくは一瞬「うっ」となった。なんとぼくの苦手なグリーンがいるんである。グリーンにもいろんな種類のグリーンがあるが、この場合のグリーンはフルーティーな甘めのグリーンとでも言おうか。
とにかく青臭い。ぼくはそういう香りが実はとても苦手なので、「これはちょっと失敗したかな」と一瞬思った。ところがである、これまたベルトランバイアスがかかっているからかもしれないが、だんだんと時間が経つにつれて、そのグリーンを奥に控えさせて、ちょっとレザリーな雰囲気が出てきて、そこに明らかにインセンスの香りが入って来る。その変化が実に面白くて、なーんだ、このグリーンならありじゃない!っていう気持ちになってしまったんである。苦手な香りも好きにさせてしまうベルトラン。
実はね、ウードもパチョリも最初は苦手な香料だった。だから、ベルトランの「アルード」を最初に試した時も「うえっ!」ってなったし、同じくベルトランによる「パチョリパッチ」だって、あの土臭さに「なんじゃこりゃ?これはラルチの中でも最後の方に買うに違いない」と最初から拒否反応をしていた。
ところが、ベルトランによって飼いならされてしまったぼくの鼻はどちらの香りも大好物になったのである。
それと同じ現象がこの香水にも言えて、苦手なはずの甘めグリーンは受け入れられるようになるかもしれない。(苦手なグリーンはもっと青臭い、甘味レスなグリーンね)
今日はこの香りを付けてボイトレに行ったり、伊勢丹や阪急メンズ館(このブランドを教えてくれたスタッフにお礼を伝えるために)に行ったりするとき、常につけていたのだが、トップの甘いグリーンを保ちつつも、しっかりとそれが変化してちょっとだけメタリックな顔を見せてからだんだんとインセンスやレザーへと変化して、最後はそこに落ち着く香りになった。

NOTES

Incense, Sweet Orange, Liquor, Spices

この香りの成分を見てみると、不思議なことにグリーンの要素はまったくない。さらにレザーもない。それなのにここまでそういった香りを感じさせるのは、やはり提示されているこれらの香水の組み合わせによって作られる香りなのであろう。

My Evalution

★★★★

これは、あくまでも、昨日ご紹介した「Dorian's Spleen」と比較した結果の評価なのであるが、やはりまだこの甘グリーンがなかなか素直に仲良くなれる距離感ではなく、とりあえず、この評価に落ち着く。