第25夜 Jacarandá

はかないウッディーな香り

f:id:happyinkdays:20210321203521j:plain

 

DATA

Name: Jacarandá(ハカランダ)
Brand:Fueguia 1833
Lauched in 2016
Perfumer:Julian Bedel
30ml ¥19,800

My Episode

ハカランダの花…。
ぼくはこの花のことを何度も聞いたことがある。
メキシコでは春を告げる花としても知られており、日本の桜と比較されることも多いのだとか。
メキシコでは2月後半から3月の上旬に花を咲かせる木で、まるで桜のように細かい花がたわわに咲く。
しかし、ハカランダの花の色はピンクではなくて薄い紫色だ。
確かに写真で見ると、街のあちこちに咲く様はまさに日本でいうところの桜みたいで、きっとぼくもこの花を見たら桜を連想するのではないかと思う。
そんなハカランダをモチーフにした香水が出るというのですごく楽しみにしていた。
それが2016年の11月のこと。
実はこの香水が発売された11月25日、半年ほど闘病していた父が他界した。前日に療養中の施設で肺炎を起こし、施設の近くの病院に搬送され、そのまま帰らぬ人となったのだが、東京から離れた場所の病院だったため、始発の電車で病院に向かい、それから車で父の遺体を搬送し、都内に戻ったのは、お昼過ぎだった。
葬儀の手配などを済ませ、諸々の手続きをしたぼくは、喪服を持っていないことに気づき、慌てて銀座に買い物にでかけた。
しかし、気づいたら、ぼくは六本木のフエギアにいた。
急にその日に発売のハカランダが気になったのだ。
ひょっとしたら不謹慎なって思われるかもしれないけれども、親族以外の人と、何となく父とは関係のない話をして気持ちを紛らわせたかったのかもしれない。
でも、それは正解だった。
というのも、このフエギアのハカランダは、花の香りではなく、木の方の香りが強かったから。ジュリアンが子どもの頃よく遊んで入っていたハカランダの木の箱のイメージで作られたという話を聞いて、ぼくは、父の亡くなったその日にこの香水をお迎えすることはとても自然のことのように思えた。
今でも、だから、この香水をかぐたびに、父が亡くなった日のことを思い出すし、あの前後のさまざまな出来事が、この香水の香りとともにベールに包まれているような気持ちになるのだ。

NOTES

Tonic note: Rosewood
Dominant note: Mahogany
Sub Dominant: Spruce

とにかく、木の香りが好きな人にはたまらないんじゃないかと思う。濃厚でそして、ほんのり煙っぽい雰囲気もする。お香のような感じも。ちなみに、Spruceとは、マツ科の針葉樹で、主に、フローリングやドアなどの内装材に使われる木材のこと。

My Evalution

★★★

これも★3つで少ないと思われるかもしれないけれども、好き嫌いではなく、単にあまりつける機会がないから。外につけるというよりも、家の中でひっそりとつけたい香りなので、出番が少ないというのもある。