第14夜 Al Oudh

砂漠の夜空を思わせる孤高の香り…

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DATA

Name:AL OUDH(アルード)
Brand:L'Artisan Parfumeur
Lauched in 2009
Perfumer: Bertrand Duchaufour
日本での発売終了

My Episode

最近のぼくのSNSを見ている人は、ぼくは毎日のように、ウード、ウードと念仏のように唱えているのをご存じであろう。
しかし、ぼくのウード好きのきっかけとなった、この香水は実は最初はさっぱりわからない香りだった。
この香りと一番最初にきちんと向き合ったのは、2013年ごろに当時のラルチザンパフュームが汐留で開催したイベントの時だった。
香りで世界を旅するという企画で、さまざまな国をモチーフとしたラルチザンパフュームの香りを試しながら、スタッフからその香りにまつわる話を聞くという内容だった。
これが本当に楽しくて、今でも、何度か通ったあのイベントの衝撃を忘れることができないほどだ。
その中に、この「アルード」があった。
中東の砂漠をイメージしたこの香りを初めて試した時、ぼくの鼻はさっぱりこの香りの良さがわからなかった。
それこそ「パチュリ・パッチ」をかいだ時と同じような反応だった。
とにかく最初から「ダメ!これは無理!」と思うほどの拒否感があった。
でも、これも周りの人たちから「健さんにぴったりだよ」と言われ続けていた。初めてこの香りを試してからこの香りを受け入れられるようになるまでに約半年ぐらいかかってしまったのだが、一度この香りを受け入れることができると、それまで何度も試しただけあり、「アルード」という名前を見聞きしただけで、この香りの隅々まで明確に鼻の中で再現できるまでになった。
そして、この香りこそがぼくがずっと探していた香りなのではないか、とさえ思えるようになるほどだった。
ぼくは2014年の秋にラルチザンパフュームの本店に行くためにパリ旅行を計画したのだが、その時の飛行機がエティハド航空で、アブダビ経由でパリに行くというルートだった。
HISでそれを知った時、頭の中で
「え?アブダビ?中東?砂漠?ウード!?」
と連想ゲームが始まり、ぼくはアブダビで1泊してからパリに向かうことにしたのだった。
その目的は2つ。

1.砂漠でアルードの写真を撮ること
2.アブダビ市内でウードの香水を見て回ること

1泊の間に、アラブ圏で最大級のイスラム教寺院を2度見に行き、夕方から砂漠行きのツアーに参加し、その合間を縫って街中をウードを求めて歩き回るという強行スケジュールを敢行したわけだが、ぼくは、きっちりと目的を果たしてきた。

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おりしも、香水業界はウード全盛期だったらしく、機内誌を読むと、様々なDCブランドがウードを使った香水を出していて(多分、エティハド航空だったからなのかもしれないけど)、行きの飛行機の中で一人で勝手にウード祭りをしていたくらいだ。

そして、その後、ぼくはどんどんウード系の香水にはまっていくわけだけれども、それでも、ぼくはこの「アルード」以上のウード香水と出会ったことはない。

これは、ひょっとしたらぼくの中では、別格扱いなのかもしれない。
ぼくにとっては、ウードを巡る旅を始めるきっかけとなった重要な香水だし、おそらくこれからもずっとこの香りを愛し続けることになるだろう。

「バラ泥棒」の記事を書いた時、無人島に持っていく1本の香水の話をしたのだが、「バラ泥棒」の他にもう一本持っていきたい香りがあると書いたのは、実はこの「アルード」のことなのだ。

ともあれ、「アルード」に関しては、これからも記事の中にもちょこちょこ出てくることになるだろう。ただ、残念なのがラルチザン・パフュームのリニュ―アルに伴い、日本での扱いがなくなってしまったこと。これは本当に悲しい。

NOTES

Top notes:Caraway, Dates, Dried Fruits, Cardamom, Pink Pepper, Orange Blossom
Middle notes:Agarwood (Oud), Leather, Incense, Saffron, Rose, Iris, Neroli
Base notes:Civetta, Myrrh, Sandalwood, Patchouli, Musk, Virginia Cedar, Tonka Bean, Vanilla

とにかく、一度かいだら忘れることができない独特の香り。冷たい空気を思わせるのは、ピンクペッパーの作用が働いているのだろうか。ラストノートにバニラやトンカビーンといった甘い香りが書かれているが、肌質によって、それがどう出てくるか。ぼくの場合はパチュリの重さが甘さに勝る感じで、それがウードと見事に混じり合い、肌の上で孤高の香りを作り出してくれている気がする。
ぼくがこの香りの虜になる前から周りの人たちが「健さんの香り」と言ってくれていたということは、やはりそれだけこの香りとぼくの印象がマッチしているということなのだろうか。だとしたら、これほど嬉しいことはない。

My Evalution

★★★★★