第282夜 L'incendiaire 

燻された獣の香り

 

DATA

Name:L'incendiaire (ランソンディエール)
Brand:Serge Lutens (セルジュルタンス)
Lauched in 2014
Perfumer: Christopher Sheldrake
50ml ¥55,000

My Episode

最近色々なブランドから廃番のニュースが入ってきて、非常に焦っている。
すでに廃番になってしまって、アーカイブそのものが古いものだと、まだあきらめがつくのだが、廃番のニュースが流れて、その香りの好きな人たちの間で争奪戦が始まると、それまでその香りにそんなに興味がなくても、何となくソワソワしてしまうということは、沼の住民なら誰もが経験していることなのではないだろうか。
セルジュルタンスは以前「悪魔の寝床」に魅了されて一本だけ持っていたのだが、他の香りはそれほど心をそそられる感じではなかった。
だが、通常ラインの他に別の高級ラインがあり、そのラインに魅力的な香りがあるとは聞いていたので、いつか試したいとは思っていた。
だが、だが、である。50mlで55,000円という強気の価格に、ぼくも見て見ぬふりをしていた。知らなければ、この世の中からないものとみなされ、心穏やかに、ならぬ鼻腔穏やかに過ごせるではないか。
だが、その高級ラインであるセクションドールのほとんどが廃盤になるというニュースを聞き、ぼくはどうしても試さないわけにはいかなかった。
そこで香水好きのマダムと連れ立って(まだ資生堂の銀座店に一人で入る勇気はない…笑)、試しに行ったのである。
どれもなかなか素敵な香りだったのだが、中でもぼくの鼻腔を一番くすぐったのが、この「ランソンディエール」だった。
とにかく、臭い。
ほんとに、臭い。
とことん、臭い。
どう臭いのかというと、非常にアニマリックなのだ。
動物の何かの香りがするとでも言おうか。
基本的に甘くて濃厚な香りなんだけど、そこにどっしりと獣が横たわっている感じ。
でも、その獣臭さというのが、嫌な感じではない。ムワッとするけれども、そこに甘さとか、煙たさといったぼくの好きな要素がしっかりと絡んでいるので受け入れられるのだ。
とあるサイトでは、ウードが入っているというようなことが書かれていたが、確かにこの重さはウードに通じるものがある。
ちなみにこの香水の邦題は「炎の宣告」そして、香水名を直訳すると「放火魔」とか「焼夷弾」という意味らしい。
なんとも物騒な名前ではあるけれども、この香りをかいでみれば、その理由がわかるだろう。
ともあれ、とにかく特徴のある香りなので、好き嫌いははっきりと分かれるだろう。

NOTES

Smoked Woods, Birch Tar, Carnation, Sandalwood, Amber, Incense, Olibanum, Geranium

FRARANTICAには調香の情報がまったく載っていなかったのだが、WIKIPARFUMというサイトに調香師や調香の詳細が記載されていたので、それを基にした。

My Evalution

★★★★

個人的にはとても好きな香りなんだけど、果たして、これを周りの人たちに受け入れてもらえるだろうか?という不安が若干ある。それくらい癖のある香りなので。特に夏は難しいかな。冬に服の下にそっと忍ばせたらセクシーだと思うので、星4つにした。