第316夜 Halfeti Leather

シナモンの奥にひっそりと隠れたレザーとウード

 

DATA

Name:Halfeti Leather
Brand:Penhaligon's
Lauched in 2020
Perfumer: Christian Provenzano
日本未発売

My Episode

千一夜香水物語を読んでくださっている人の多くはご存じだと思うが、ぼくはウードの香りが大好きで、ウードを巡る旅と称して、様々なウード系の香水を集めているのだが、実はこの「Halfeti Leather」もそんなウードを巡って調べているうちに知った香りのひとつ。
実はその前に「Halfeti」という香水もあり、そちらも同じ調香師によるもので、その香りを先に手に入れた後、この香りを知り、しかも、それがネットで手に入るというので、(恐らくebayで探し当てたのだと思う)思い切って注文したのだ。
そして、今回クリスマス企画でシナモンの入っている香水を手持ちのまだご紹介していない香水の中から選ぼうと思ってヒットしたのがこの香りだったというわけだ。
調香師はぼくの大好きな調香師のひとりであるクリスチャン・プロヴェンザーノ。
彼はペンハリガンでは他にもいくつかのウード系の香水を出しており、これは是が非でも試したいと思って、思い切ってブラインドバイしたのだった。
そして、早速試してみたのだが、これが実にユニークな香り。ハルフェッティとはまったく違う香りでありながらも、トップからミドル、ラストへの変化が面白い。
トップはすっきりとしたスパイスの香り。プラムやベルガモットが他のカルダモンやグリーンの香りを抑えている。
ところが、ミドルになると、一気にクリーミーに変化する。クミンやナツメグといった香りが、トップで隠れていたカルダモンやグリーンを引き出すのかもしれない。その感じが非常に面白いのだ。
で、実はぼくはこのミドルが非常に苦手。
サンダルウッドを思わせるようなクリーミーなグリーンがどうしても受け付けない。
うーん、どうしようかしら…と思ってしばらく我慢して放置していると、そのグリーンみがだんだんと落ち着いてきて、ラストのレザーとウードの香りがどっしりと感じられ、そこにインセンスが加わるんである。昇華されるという感じだろうか。
もうね、この変化が実に素晴らしい。
あぁ、やっぱりクリスチャンプロヴェンザーノという人はウードを使うのが上手な人なんだなと思う。
最後のレザーとウードを出すために、トップとミドルを使っているのかもしれない。この重さはそれまでの過程で感じられる様々な香りがあるからこそより鼻に強烈な印象を与えるのだろう。
香水の香りの構成というものを実に見事に一本にまとめたと思われるような、そんな香りだと思った。


NOTES

Top notes: Cardamom, Plum, Lavender, Bergamot, Green Notes, Citruses
Middle notes:Rose, Cumin, Cinnamon, Nutmeg, Violet, Jasmine
Base notes:Leather, Agarwood (Oud), Incense, Cedar, Patchouli

トップノートは大好きなのに、ラストノートが苦手、という香りがあり、ラストノートが長いがために、そういった香水は敬遠してしまうのだが、その逆で、トップノートやミドルが苦手でもラストが良ければ、すべてよし!という香りだと、だいたい買っても後悔することはないように思う。この香りはまさにその典型で、ラストのこの好きな香りがあるからこそ、トップからミドルを我慢できるのだ!いや、むしろその快楽を与えるためのトップからミドルの香りなんだ!と思えば、また愛おしいではないか!そう思いながらこの香りと付き合いたい。

My Evalution

★★★★

とはいうものの、やはりトップからミドルも好きな香りでいて欲しいというのが香水フリークの願うところで、そういう意味ではちょっと残念な気もする。