第366夜 opponent

甘いだけじゃない複雑な香り

DATA

Name:opponent
Brand:KOHSHI
Lauched in 2021
Perfumer:Matsuno Hidenori(松野 秀至)
50ml ¥18,700

My Episode

2022年に開催されたサロンド・パルファンでは、ウード系の香水をかなり意識しながら試していったのだが、もちろん、それ以外の香水にも魅力的なものはたくさんあった。
ただ、KOHSHIの場合、51種類もあり、さらにあのごちゃごちゃとした売り場でじっくりとすべての香りと向き合うわけにもいかず、あらかじめパンフレットを読み、香料をある程度把握した上で、その中から気に入ったものだけをピックアップして選ぶようにしていた。
ぼくの鼻腔がそんな中でひくひくと反応した香りのひとつに「opponent」がある。相手とか、敵対者という意味があり、公式サイトのこの香りの説明ページにはライオンの横顔の写真が使われている。
ただ、ぼくの肌の上ではそれほど雄々しい感じはしない。特にトップは爽やかな甘い香りが漂う。
ただ、やはりKOHSHIの香りは一筋縄ではいかない。甘い香りの奥に深みのある香りが潜んでいて、それが見え隠れするんである。面白いのは、ミドルからラストにかけても、その雄々しさが前面には出てこないこと。ほのかに香る程度。そこがね、ものすごい個性なんだと思う。
あまさも、ジューシーな甘さからヴァニラのようなグルマンな甘さに少しずつ変化していくところも面白い。
これは癖になりそうな香りだと思う。

NOTES

Top notes:Lemon,Yuzu,Bergamot,Cardamon
Middle notes:Freesia,Muguet,Jasmin,Rose 
Base notes:Vanilla,Musk,Amber,Sandalwood,Peach

トップは比較的ぼくの苦手な柑橘系の香りを中心に構成されているが、ミドルとラストの香りがしっかりとトップの中にも感じられるので、ぼくでも受け入れられる香りになっているのかもしれない。

My Evalution

★★★★
ほのかな甘さはどんなシーンにも似合いそうで、何かと出番が多くなる香りなんじゃないかと思っている。

第365夜 as emotions go

雄々しくてアニマリックな香り

DATA

Name:as emotions go
Brand:KOHSHI
Lauched in 2021
Perfumer:Matsuno Hidenori(松野 秀至)
50ml ¥18,700

My Episode

2022年に開催されたサロンド・パルファンは、事前情報から、ウード系の香水がたくさん登場することは知っていた。
フエギアやゲランからもウード系香水が出るし、他にもいくつかのブランドで気になるウード系香水があった。だから覚悟はしていたのだが、蓋を開けてみたら、ぼくが事前に入手していた情報よりもはるかに多くのウード系香水が登場し、ぼくの鼻腔は会期中ずっと狂喜乱舞していた。
そんなぼくの鼻腔を特に刺激したのが「KOHSHI」だった。何よりも驚いたのが調香師が日本人の方であるということ。今まで何人か日本人の手掛ける香水を試したことがあるのだが、どこか日本人らしい穏やかさが感じられて、ぼくには物足りないものも少なくなかった。だが、KOHSHIの香水はそんなぼくの「日本人の手掛ける香水は控えめ」という先入観を一変させるものだった。
とにかく、どの香りも個性的だし、妥協をしていない様子がちょっと肌に載せただけでもわかる。
もちろん、その時点で51種類も並べられていたので、比較的香水になれていない人でも使うことができる軽めの香りもあるのだが、でも、一癖も二癖もあるような香りの方が圧倒的に多かった。
今日ご紹介する「時の過ぎゆくままに」という意味の香水も、そんな癖のある香りだ。
まず肌載せした時に感じたのがアニマリックな香り。
これは、好き嫌いがはっきりとわかれるんじゃないだろうか?
獣臭がトップでするんである。
しかもそれがさらにレザー感も伴って、ますます癖が強くなってくる。
だが、ミドルからラストになるとその癖がぐんと肌に馴染み、柔らかくまろやかに変化するところがこの香水の面白さ。
トップだけで判断せず、しばらく肌で温められてからの香りを試して欲しい香りだ。

NOTES

Top notes:Orange,Pine needle,Mandarine,Ginger
Middle notes:Neroli,Rose,Spike,Lavender,Green Tea,Narcissus,Galbanum
Base notes:Agarwood(Oud),Black Musk,Labdanum,Leather,Sandalwood

ミドルから深みが増してくると、お茶の香りが非常に感じられるようになるのだが、グリーンティーというよりもぼくは中国茶(ラプサンスーチョン的なスモーキーな香り)のような印象を持った。

My Evalution

★★★★
トップから感じられる獣臭さをどこまで受け入れられるか、でこの香りに対する評価が変わってくると思う。

第364夜 carte au trésor

屋根裏でみつけた宝の地図は甘くてスモーキーな香り

DATA

Name:carte au trésor
Brand:KOHSHI
Lauched in 2021
Perfumer:Matsuno Hidenori(松野 秀至)
50ml ¥18,700

My Episode

フランス語で「宝の地図」と名付けられたこの香りのテーマは、「屋根裏部屋で発見した埃まみれの箱の中に入った一枚の宝の地図」だ。この香りをサロンドパルファンで試したのは、二日目か三日目のこと。内覧会の時にパンフレットをもらい、そのパンフレットに全香水の香料が記載されていたので、それをエクセルで一覧にして、その中から「Agarwood」や「Patchouli」といった自分の好きな香料が入っている香水をまとめておいた。その中にこの宝の地図が入っていたのだ。
他にもAgarwoodが入っている香水がいくつかあったので、いっぺんにそれらを揃えるのではなく、毎日のようにサロンドパルファンに通いながら、少しずつ選んで購入していった。
そんな中でも特に印象的だった香水のうちの一本がこの「carte au trésor」だった。
肌に載せた時にまっさきにぼくの鼻腔をくすぐったのは、少し甘めのスモーキーな香り。
ちょっとナッツのような雰囲気もあり、すぐにぼくはこの香りと仲良くなれる気がした。こういう甘くて、そして乾いた香りが大好きなんである。
そして、この香りは最初から最後まで徹頭徹尾、甘くて煙い。もう、その潔さが好き。
恐らくこの香りを支える程度にウードが入っているのかもしれないが、それほどウドウドしくないので、ウードが苦手な人でもこの香りはイケるのではないだろうか。
夏の湿度の高い時などに纏ってみると湿度を低くしてくれる香りになりそうな予感もして、夏に纏うのを楽しみにしている。

NOTES

Top notes:Lemon, Bergamot,Aromoise.Vanilla
Middle notes:,Fenugreek,Rose,Violet leaf,Lilac,Neroli
Base notes:WhiteVanilla,Agarwood(Oud),Amber,Oakmoss,Musk

Fenugreekってなんだろう?と思い、調べてみたら、スパイスとして使用される種子で、甘い香りと強い苦みがあり、メープルシロップに似た香りなのだとか。なるほど!ものすごく納得した。メープルシロップも少しスモーキーに感じることがあり、この香水の核になっているのかもしれない。

My Evalution

★★★★★
手放しで大好きだと言える香り。自分の肌から香ばしい香りがしてきて、気持ちよくなる。陽に灼けた肌にも似合いそうな、そんな香りだ。

 

第363夜 filling station

まったりウードの香り

DATA

Name:filling station
Brand:KOHSHI
Lauched in 2021
Perfumer:Matsuno Hidenori(松野 秀至)
50ml ¥18,700

My Episode

サロンドパルファン2022の会期中、ぼくはまるでバイヤーのように毎日会場に足を運んだのだが、内覧会も含めて3日目ぐらいになると自分の好きなブランドのスタッフの皆様とは顔なじみになり、あれこれと話をする機会も増えた。
そんな中で先方もぼくの好みの香りをわかってくれるので、いくつかの種類があるブランドでは、それらの中からぼくの好みの香水を選んでくれることも多くなった。
特にブーディカザヴィクトリアスKOHSHIの場合は種類が多かったので、余計に選択肢が増え、それはそれは楽しい時間を過ごすことができた。
今日ご紹介するfilling stationは、そんなやり取りの中でスタッフがおすすめしてくれた香りだ。
ぼくはとにかく、重くて深い香りが好きで、香料としては、ウードやパチョリを好む。その両方を兼ね備え、さらにウード好きに特におすすめするのがこの香りということで、この香りを選んでくれたのだ。
ぼくは事前にKOHSHIさんの香水を香料別に一覧表にしていたので、この香りの存在は知っていたのだが、あまりにも種類が多く、それらをすべて試していると、なかなかそこまでたどり着かなかったので、スタッフのおすすめは非常に助かった。
さて、早速その香りを肌載せしてみると、名前の通り、ガソリンステーションのような独特のエンジンのような香りがトップで感じられた。
さらに、そこから時間が経つと、まったりとした重い香りとなり、クリーミーに変化するところが、海外のブランドで見られるような独特の雰囲気が感じられたのである。
これ、日本人の調香師が調香したとは思えないくらいの個性の強い香りなんじゃないだろうか。
何も知らなかったら、中東かどこかの香りだと思ってしまうほど重い。
好き嫌いがはっきりと分かれる香りだと思う。

NOTES

Top notes:Lemon, Thyme Red, Buchu, Thyme White
Middle notes:Lavender, Jasmin, Carnation, Rose
Base notes:Tabac, Leather, Agarwood(Oud), Amber, Vanilla, Patchouli

タイムにレッドとホワイトがあるとは思わなかったので、これは意外だった。タバコ、レザー、ウード、アンバー、バニラ、パチョリというぼくの好きな香りのオンパレードなのだが、実はぼくはものすごくこの香りが好きかというと、実はちょっと違うんだる。
クリーミーさが感じられて、どうしてもそのもっさり感が鼻についてしまう。
もう少し乾いたスモーキーな香りが欲しいところ。

My Evalution

★★★
嫌いではないけど、手放しで好きになれないのは、このもっさり感。グリーン味もほんのり感じられるので、それもちょっと違和感になるのかもしれない。

第362夜 alecto

変化を楽しめる香り

 

DATA

Name:alecto
Brand:KOHSHI
Lauched in 2021
Perfumer:Matsuno Hidenori(松野 秀至)
50ml ¥18,700

My Episode

KOHSHIの香水も面白いところは、トップとラストの印象ががらりと変化するところ。
そこが海外の香水っぽいし、凝った感じがしてぼくは大好きなんである。
例えば、今日ご紹介するalectoもそんな香りだ。
トップは非常に個性的で、苦みのある柑橘系という感じがするのに、ミドルかは非常にジューシーな甘さを伴ってくる。柑橘系のすっきりとした感じはかすかに残っているものの、ジューシーさの方が勝るのだ。
ところが、ラストになると、ちょっとアニマリックでウッディな雰囲気を漂わせてくる。
え?お前、そんなところに潜んでいたの?
という驚きがあるのだ。
だから、特にKOHSHIの香水はトップだけで決断してはいけない。
このトップからミドル、ラストにかけての変化を受け入れて、初めてこの香水の世界観がわかるのだ。
香水というのは、元来、そういう香りの変化を楽しむものなので、どのブランドの香水もそういう流れを把握した上で買った方が良いのだが、特にKOHSHIの場合はその変化が他のブランドに比べると著しいので、最初はかなり面食らうかもしれない。
そんなところもこのブランドの魅力なんだとぼくは思っている。
ちなみに、alectoとは、ギリシャ神話に登場する復讐の女神のうちの一人の名前なのだとか。
ラストのこの重さにその感じが漂っているが、それほどおどろおどろしくない気がする。季節にもよるのだろうか?少なくとも寒い空気の中では軽めに感じる。

NOTES

Top notes:Orange, Cinnamon, Blackpepper
Middle notes:Aldehyde, Jasmin, Rose
Base notes:Black Musk, Agarwood(Oud), Cedarwood, Amber, Patchouli

ぼくの鼻はアルデヒドのメタリックな感じがどうしても受け入れられないのだが、この香りはそんなにメタリック感はないので、絶妙な配合で入っているのかもしれない。
そして、ウードも入っているものの、ウード感はそれほど強くなく、他の香りを支える役割を担っているという感じがする。パチョリも同じ感じだ。重い香りが苦手な人でも軽やかに纏える気がする。

My Evalution

★★★★
重い香りが大好きなぼくには物足りなさも実はあるのだが、こういうジューシーな甘さは大好きなので、これから暖かくなる時期、特に昼間のおでかけに纏ってみたい。

第361夜 black cumaru

まったりとした甘い香り

 

DATA

Name:black cumaru
Brand:KOHSHI
Lauched in 2022
Perfumer:Matsuno Hidenori(松野 秀至)
50ml ¥18,700

My Episode

2022年のサロンドパルファンは、特別に前日の内覧会から参加することができた。事前情報はある程度調べておいたものの、実際に行ってみないとわからない部分もあるので、ほとんど前知識を持たないまま当日を迎えた。
そうしたら、もう、初日から、ぼくの鼻はスパークリングしまくっていた。知らないブランドもいくつかあったし、それらはどれも楽しいし!
その中でぼくが一番感動したのが、KOHSHIさんだ。
日本人調香師が手掛ける新しいブランドというのもさることながら、とにかく種類が多い。その時で51種類の香水が並べられていたのである。
そして、初日にブランドのスタッフにお話を伺い、いくつか試させてもらい、ぼくはもうすっかりこのブランドの虜になってしまったのだ。
とにかく香りそのものがユニークなのである。
日本のブランドというと、比較的おとなしい印象の香りが多いイメージなのだが、KOHSHIの香水はそんな先入観を捨て去るほどのインパクトのある香りが多い。
日本人離れした香りの作り方をしているのである。
もちろん、中には日本人の好きそうな香りというのもあるのだが、どれもひねりが効いている気がする。
だから、ぼくはサロンドパルファンの会期中、毎日KOHSHIさんのブースに通いつめ、調香師の松野さんがいらっしゃる時は、いろいろとお話を伺ったりしたんである。
そんな中で購入した香水を今週は取り上げていきたいと思う。
まずは、この「black cumaru」だが、トップノートからもさっさりとした独特の甘さが漂う。「cumaru」とは香水好きな人たちの間ではお馴染みのトンカのことである。
KOHSHIさんのサイトでもトンカの写真が使われている)
この香り、非常にまろやかだ。
クリーミーというか。
ぼくはこの香りをかいだ時、なんだか一瞬南国のホテルにでもいるような気持になった。
この独特の重たいまったりとした甘さがそういう気分にさせたのかもしれない。

NOTES

Top notes:Lemon, Mandarine, Eucalyptus
Middle notes:Caraway, Rose, Jasmin, Nutmeg, Blackpepper
Base notes:Tonka beans, Vanilla, Vetiver, Musk

ぼくの鼻が鈍感なのか、トップのレモンやマンダリンはあまり感じられず、最初から甘いクリーミーな香りがする。
ラストにかけて、香りが複雑に絡み合い、独特のまさに海外の香りを感じさせるのは非常にセクシーで良いと思う。

My Evalution

★★★★
実はぼくはあまりクリーミーな香りというのを好まないので(クリーミーよりももっとドライな香りが最近好きになってきた)、その点が少し気になるが、例えば夏の夜とかにぐっとセクシーな気分になりたい時に纏うと気分が上がるかもしれない。

ちなみに、ボックスを開けると、蓋の裏にメッセージが書かれているのだが、これから全部で108本の香水を作ろうとしているブランドらしいメッセージで、思わずニヤリと笑ってしまった。



第360夜 Glorious

意外性に包まれた不思議な香り

 

DATA

Name:Glorious(グロリアス
Brand:Boadicea the Victorious(ブーディカ ザ ヴィクトリアス
Lauched in 2012
Perfumer:Christian Provenzano
50ml ¥24,090

My Episode

2022年のサロンドパルファンは会期中、毎日通ったのだが、ほぼ毎日のように何かしらを買っていたような気がする。海外のブランドでぼくが一番購入したのがブーディカだった。
だが、あまりにも通い過ぎたせいで、一体どういう経緯で購入するに至ったのか記憶があいまいになってしまった。
でも、このブランドが今後日本で定番化されるかどうかわからなかったので、とりあえず、肌載せしてみて、少しでも良いと思ったものは買うことにした。
このグロリアスの決め手になったのは、やはり他の香りと同様、一風変わった、今までに香ったことのない香りだったから。
このブランドの他の香りもそうなのだが、非常に複雑で、こういう香りと表現しにくいところがある。
これもまた、正体不明(笑)。
爽やかなようで、クリーミー
さっぱりしているようで重い。
そんな印象だ。
でも、こういう香水というのは、じっくりと付き合っていくうちに自分との距離感がわかってくると思うので、第一印象を大切にしながら向き合いたいと思っている。

NOTES

Top notes:Raspberry, Pineapple, Apple, Cardamom, Cassis
Middle notes:Elemi resin, Nutmeg, Rose, Jasmine
Base notes:Guaiac Wood, Cedar, Moss, Sandalwood, Patchouli, Musk, Amber, Vanilla

爽やかに感じるのはトップノートのラズベリーやパイナップのようなジューシーな香料によるもの。クリーミーなのはミドルノートのエレミレジンやベースのサンダルウッドがそういう雰囲気を作っているのだろう。これが時間が経つにつれてどのようにぼくの鼻に作用するのか、静かに見守りたいと思う。

My Evalution

★★★
これもすぐに評価することができない香りだ。このブランドは本当に難しい。でも、だからこそ追及し甲斐があるのではないだろうか。