第60夜 Dries Van Noten par Frederic Malle

バランスの取れたファッショナブルな香り

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DATA

Name: Dries Van Noten par Frederic Malle(ドリス・ヴァン・ノッテン
Brand:Monsieur Frederic Malle
Launched in 2013
Perfumer:Bruno Jovanovic


My Episode

もうお気づきの方も多いと思うが、今週の香りのテーマは、「仲良くなったベテランの香水店員さんがおすすめしてくれた香り」である。彼は大阪のデパートの香水売り場を担当しているのだが、その彼からある時手紙をいただいた。
ぼくが2019年の末に「ローディベール」を購入したので、そのお礼とともに、いくつかのおすすめの香水のムエットなども入っていた。その後、彼から何度か同じようなお手紙をいただいたのだが、必ず彼がおすすめの香りの情報やムエットが入っていて、それがぼくにとってはお守りのようなものだった。
香水の名前ってほとんどがフランス語なので、全然覚えることができず、仕方がないからその手紙を持って売り場に行くこともしばしばだった。
そしてその中に入っているムエットの中で、いくつか気になる香りというのもあった。その一つが今日ご紹介する「ドリス・ヴァン・ノッテン」の香水だった。
すっかりその香りに魅了されたぼくは、絶対にこれはこの香りを勧めてくれた彼から購入したいと思っていた。
このムエットの入った手紙を受け取ったのが2020年の夏ごろのことで、その年の冬に仕事で大阪に行った時に売り場に立ち寄ったものの、彼はお休みで、タイミングが合わず、ずっとこの香りをお迎えすることもできないままでいた。
きっと次に大阪に行く時に彼からこの香水を買うだろうなぁと呑気に思っていたのだが、なんと、その彼がその百貨店を2021年の4月いっぱいで辞めるという話を4月の上旬に聞き、ぼくはとてもショックを受けた。そして、いてもたってもいられず、先週の金曜日(4月23日)に仕事の合間を縫って、弾丸日帰りで行ってきたのである。

大阪も新型コロナの感染症防止対策で緊急事態宣言になるかならないかというぎりぎりのところでひやひやしながらなんとかギリギリ(ぼくが行った2日後からデパートが閉鎖になってしまった!)で彼に会うことができ、この香りをお迎えすることもできた。

ぼくは実はファッションにはまったく疎くて、ドリス・ヴァン・ノッテンのことはまったく知らないのだが、この香りは、フレデリック・マルが敬愛する人物の世界観を香りで表現するというシリーズの第一弾として作られた香りである。

ドリス・ヴァン・ノッテンは、90年代のファッションシーンに革命を起こしたと言われるベルギー出身のファッションデザイナー。マルが創業時に友人を介して二人は知り合い、親交を深めたという。

そんな彼をイメージする香りとして天然のサンダルウッドを選び、5人の調香師にコンセプトを伝えて、ドリスの香りを調香させたというのだ。18か月後にそれらの試作品を持ってドリスの元を訪れ、その中からドリス自身によって選ばれたのがこの香りだ。

ムエットでも何度も何度もかいだ香りなのだが、肌に載せると、本当に素晴らしい香りだということが実感としてわかる。最初の感想は「かっこいい!」。とにかく、かっこいい香りなのだ。洗練されていて、個性的でもある。ただ、その個性的なのが押しつけがましくないというか。かといって迎合しているわけでもない。その微妙なバランスを感じられる香り。

ぼくは個性的な香りがとても好きで、そういう香りばかりを選んでしまうのだが、時に、その個性的なのが強すぎて、キャラ立ちし過ぎてしまう香水もままある。それはそれで、透明感よりも存在感を求めるぼくにはたまらない魅力なのではあるが、時々あまりにも個性が強すぎて、果たしてこれは他の人に押し付けてしまうのではないか?と不安になってしまうことも少なくない。

ところがこの「ドリス・ヴァン・ノッテン」は個性的なのに、そういう不安を一切感じないのである。
ぼくの大好きなスモーキーさと甘さを感じるだけではなくて、その奥にピリッとしたスパイスもあって、それがアクセントになっている。この香り、私服にも合うけど、スーツを着ている時でもこれは映えるんじゃないだろうか。
さすが、ファッションデザイナーをイメージした香りだけあり、嫌味のないファッショナブルで、幅広く使える香りに仕上がっている。これは100mlでお迎えして(というか、もう在庫がほとんどなくて、100mlのみだったのだが)良かったと思う。これからもいろんな場面でお世話になるだろう。

NOTES

Sandalwood, Vanilla, Saffron, Tonka Bean, Nutmeg, Guaiac Wood, Patchouli, Musk, Woody Notes, Clove, Peru Balsam, Jasmine, Bergamot, Lemon

 

最初はサンダルウッドのスモーキーな香りがバニラなどの甘さとともに香り、その後、ナッツのような乾燥した甘い香りが漂ってくる。

そして、時間がたつとクローブのスパイシーな香りが顔をのぞかせ、どんどんクリーミーに変化していく。

このクリーミーさはどこかでかいだことがあると思ったら、ルラボのウード27でも感じたクリーミーさなのだ。恐らくこれはガイアックウッドの香りだろう。石鹸のような香りがするのだ。

この香りの面白いところは、比較的短時間の間に香りがどんどん変化し、様々なノートが顔をのぞかせるところ。そこがファッショナブルに感じる要因なのかもしれない。

My Evalution

★★★★

 

ちなみに、この香りを作ったのは、一昨日ご紹介した「ムッシュー」を作った人。彼は多作の調香師ではないようだが、「ドリス・ヴァン・ノッテン」と「ムッシュー」はどちらもかっこよい香りという共通点がある気がする。そこがこの調香師の得意とするところなのかもしれない。