第59夜 L'Eau d'Hiver

温かみのあるハーバルな冬の水

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DATA

Name: L'Eau d'Hiver(ローディベール)
Brand:Monsieur Frederic Malle
Launched in 2003
Perfumer:Jean-Claude Ellena

100ml ¥29,150


My Episode

初めて会う香水売り場の販売員と話をする時にぼくが心がけているのは、自分がどんな香りを求めているのか、ということを明確に伝えることだと思っている。
最初のうちは自分がどういう香りが好きなのか、どういう香りを求めているのかわからない場合も多いので、そういう時は素直にその旨を伝えれば、もし相手が本当のプロだったら、いろんな会話からその人に合った香りを見つけてくれるだろう。
ぼくは初めて会う香水売り場の人には、自分が今まで集めてきた香りの中で好きな香りを伝えるようにしている。さらに一歩踏み込んで、好きな調香師の名前を挙げる。
その時にぼくが必ず上げる調香師がベルトラン・ドショフールとジャン・クロード・エレナである。この二人の名前を挙げれば、香りのプロであれば、「なるほど、だいたいあの辺の香りが好きなんだろうな」と検討が付く。
ベルトランもエレナもタイプとしてはまったく違うのだが、非常に個性的であることは確か。その人なりの輪郭のようなものはそれぞれ持っているような気がする。
そして、その二人の名前を挙げた時、もしそのブランドにその人たちが手掛けた香水があったとしたら、話は早い。
まずはその香りを試させてもらえばよい。
ただ、だからといって、その香りがすぐに好きになるかどうかは別の問題。
ベルトランにせよ、エレナにせよ、すべての香りがぼく好みかというと、そういうわけではないからだ。
今日ご紹介する「ローディベール」は、まさにそんな香りだ。
昨日ご紹介した「ムッシュー」を試す前、ジャン・クロード・エレナが好きだと伝えたら、まずこの香りを勧められたのだ。
しかし、その時はピンとこなかった。
ぼくには非常にハーバルで優しい香りだったから。
「L'Eau d'Hiver」とは「冬の水」という意味。
その名前からもっと冷たい、ピリッとした香りを勝手に想像していた。
しかし、それがまったく違ったので、鼻が戸惑ってしまったのだ。
その香りを再び試すことになったのが、「ムッシュー」をお迎えした2か月後のことだった。。
ムッシュー」を勧めてくれたスタッフは大阪のデパートの店員さんで、伊勢丹のサロンドパルファンには応援で初日だけ来ていたということを知っていたので、12月にイベントで大阪に行った時に、売り場に立ち寄ってみたのだ。
ぼくをみつけるなり、彼は「あー、武田さーん!」と声をかけてくれた。それはぼくにとっては非常に驚くことだった。前もって行くことを言っていたわけでもないし、ぼくの方からは名刺を渡していたわけでもないから。
驚いていたら、「ベルトラン・ドショフールの話をあれだけ熱心にする人はいないので、覚えますよ!」と言われて、笑ってしまったのだが。
さて、その時にもいろいろな香りを試したのだが、改めて「ローディベール」を試したら、今度はすっと鼻に馴染んだ。
ヘリオトロープやアイリスといったハーバルな香りがメインで本当に優しい香りだ。しかし、それが逆に冬に纏うと温もりとなって体を包み込んでくれるのではないか、という気がしたのだ。
しかし、しばしば問題になるのは容量。
ぼくはとにかく香水をたくさん持っているので、果たしてこの香水を一生のうちに使い切ることはできるのだろうか?といつも思ってしまう。でも、できるだけ容量が多い方が結局はお買い得になるわけだし…という貧乏根性も顔を出してしまうのだ。
そんな時、ぼくは正直に店員さんに尋ねる。
「ぼくはこの香りを何ミリで買ったら良いと思う?」と。
ぼくのことを良く知っている店員さんだったら、だいたい的確に答えてくれるからだ。
お店側からすれば、そりゃ大容量の100mlを買ってもらいたいといのはわかる。しかし、ぼくのようにいろんな香水を集めている人が、果たして100mlをお迎えして後悔しないだろうか?ということを、本当にぼくのことを良く知っているスタッフだったら考えてくれるのだ。
ぼくが良く行くフエギアでも同じようなことはしばしばあるのだが、もしぼくが頻繁に使う香りだったら「ケンさん、100mlの方が良いと思いますよ」と言うし、そうでもないという時は「ケンさんは、これはたまに気分転換ぐらいにしか使わないだろうから、30mlでも十分だと思います。もしそれで足りないと思ったら、また買いなおせば良いだけなので」と…。
だから、ぼくもまだ会って2回目の彼に素直に聞いてみたのだ。
フレデリック・マルは、伊勢丹には置いていないが、他の売り場では10mlというミニボトルサイズもあるので、それも含めて相談したところ、まずは10mlで試してみて、物足りないと思ったら、50mlとかでも良いと思います。
というアドバイスだったので、その言葉に従った。
あれから1年ちょっと経つのだが、4割ぐらい使っているので、ちょうど良い感じで使えている気がしている。

NOTES

Heliotrope, Iris, White Musk, Angelica, Honey, Bergamot, Jasmine

 

トップで柑橘系の香りが載ってくるのだが、ぼくの肌の上ではその柑橘系の香りはオリエンタルに感じられる。きっとジャスミンの影響もあるのかもしれない。そして蜜蝋のような独特のクリーミーさが次にくるのだが、これはハーバルなヘリオトロープの香りによるものだと推察される。
さらに時間が経つと蜂蜜の甘さの中にアンジェリカのすっきりした香りが混じってくる感じだろうか。
エレナは2年の年月をかけてこの香りを作りだしたという。そして、この香りのコンセプトはお湯、あるいは温かいオーデコロンだったのだとか。だから、ぼくがこの香りを最初にかいだ時にあたたかさを感じたのはもっともなのである。そして、冬に纏うと春を呼び、真夏に肌に載せると冬を呼ぶという香りに仕上がったとされている。
冬生まれのぼくは、四季の中で一番好きなのが冬なので、ぼくはこの香りとはこれから長いお付き合いをするんじゃないかという気がしている。それでもやっぱり100mlを使い切る自信はないのだけれども。

My Evalution

★★★

もちろん、嫌いな香りではないが、やはりハーバルな香りというのはぼくの中ではどうしても評価が低くなってしまう。