第106夜 T.J.

知らない間に世界征服してそうな香り?

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DATA

Name: T.J.(ティー・ジェイ)
Brand: D’ORSAY
Launched in 2019
Perfumer: unknown
90ml ¥28,600

My Episode

ドルセーは、1830年から続くフランスのフレグランスメゾン。数年前に日本から一度撤退したが、2019年にフランス本国でリニューアルされ、日本でも2020年に青山に路面店がオープンし、ニッチフレグランス好きをたちまち虜にしてしまったのである。
香水だけではなく、ホームフレグランスなども扱っているのだが、ユニークなのが、香水のコンセプト。ブランドオーナーであるドルセー伯が友人の人柄を香水で表現するというコンセプトなのだ。
なので、香水のタイトルはすべて「A.N」「A.C.」「C.N.」のように、すべてイニシャルになっているのだ。
そして、その解説文もなかなかユニーク。
例えば、今日ご紹介する「T.J.」は日本の公式ホームページにはこのように書かれている。

T.J. Il n’y a pas de bien ni de mal 善悪是非
オードパルファム
「善悪是非」:インセンスの危険性、樹脂の神秘性、バニラから嗅ぎとれるいくつかのノートはダークサイドからの復帰はいつでも可能であることを思い出させてくれる。
副作用:高揚感、自己顕示欲、カリスマ性、世界征服への全能欲求の感覚。症状が続く場合は調香師にご相談ください。

ドルセー日本公式ホームページより

 

ドルセーのお店に初めて行く前に、予習をしていったのだが、この香水の説明を読んだ時に、ぼくは衝撃を受けた。
善悪是非、ダークサイド、自己顕示欲、カリスマ性、挙句に「世界征服」だぜ!マッチョだからという理由で地獄に行きたいと言っているぼくが、この言葉に反応しないわけがない!
しかも、ウードときた。
これは期待しないわけがないではないか。
さて、お店に行って、色々と試してみたのだが、やはりぼくが一番惹かれたのがこの「T.J.」だった。
ただ、「世界征服への全能欲求」という言葉のインパクトがあまりにも強すぎて、期待と覚悟が大きすぎて、実際の香りが想像と違っていたために、拍子抜けしてしまった。
ぼくは勝手にセルジュルタンスの「悪魔の寝床」的な強烈な香りを期待していたからだ。
ただ、それは悪い意味ではなく、良い意味での裏切りだった。
香りそのものは非常に柔らかいのだ。
ふんわりとやさしく香る。

だが、騙されちゃダメ!
肌に載せると、じわじわとくるのである。
今までぼくの鼻がとらえたことのない雰囲気のウードが立ち上ってくる。
かすかなスモーキーなスパイスとそれによって引き起こされるかすかな甘みがウードを伴ってやってくるという感じだろうか。
最初はわからないが、じわりじわりと世界征服の欲求が増してくるという感覚。

実はこれ、知らず知らずのうちに人を虜にしてしまうのかもしれない。
つまり、優しいふりをして、相手を洗脳しちゃうというような恐ろしさ。
でも、それがまったく嫌じゃない不思議。
うっかり軽やかだからと思って、たくさん纏ってしまうと、とんでもないことになってしまう。
そんな香りで、ぼくは非常に好きだ。

NOTES

Top notes: Resin
Middle notes: Smoke, Incense
Base notes: Agarwood (Oud), Labdanum, Patchouli, Vanilla

ぼくの肌に載せると、まず漂ってくるのはスモーキーな香り。レジン(樹脂)の香りはその中に入り込んでいる感じ。そして、だんだんとウードが他の香料を伴ってやってくる。その流れがたまらなく好きで、これも唯一無二の香りなんじゃないかなと思っている。

My Evalution

★★★★★

インパクトはないけど、じわじわと襲われる感じがたまらなく好き。寒い時期と暑い時期では香り方ががらりと変わってくるかもしれない。夏に纏うとスパイシー感が強まりそう。寒い時期は温かみの方が増す。どちらもベースは一緒なので、季節によって違う良さを楽しめる香りだと思う。