第183夜 Incense & Cedrat

一番人気のない香りが一番好きという法則

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DATA

Name: Incense & Cedrat
Brand: Jo Malone London
Lauched in 2015
Perfumer: Marie Salamagne

My Episode

3年ほど前のこと。
香水好きのマダムと一緒に伊勢丹の香水売り場を徘徊した。
彼女とは香水の好みがかなり似通っているので、一緒に色々と試すのはとても楽しい。
そんな彼女が、「ケンさん、ジョー・マローンは?」と聞いてきた。
ぼくにとっては、ジョー・マローン=重ねづけを前提としている時点で却下なブランドで、ほとんど興味がなかった。
香水単体で楽しむよりも、重ねづけすることで、自分らしさを演出できるということなのだろうが、なんかそういうコンセプトが邪道だと勝手に思い込んでいて、敬遠していたのである。
だって、基本的に香水って、単体で美しいものなんじゃないの?
たまたま何となく重ねづけしてみたら、あら、素敵!っていうのはまだわかるけど(それでもぼくはほとんど重ねづけというのはしない)、最初から重ねづけすることを前提にしていると、ちょっと待ってよ、それって単体の香水の魅力が半減ってことなんじゃないの?って天邪鬼なぼくは思ってしまうのだ。
でも、食わず嫌いは良くない。先入観は捨てなきゃ!せっかく友人がきいてきたんだし、そういう機会もないと、自分から積極的に試そうなんて思わないから、と思い、その友人とともに、売り場に行ってみた。
そこで、いつものごとく、スタッフの方に自分の好みの香りを伝える。
「重くて、個性的で、深い香り」
そんな香り、ジョー・マローンにあるのかしら?と半信半疑だったのだが、店員さんいわく、ボトルの色がブラックの物だったら深めの香りが多いとのことで、まずはそのブラックのラインから試していくことにした。
しかし、どれもこれも、ピンとこない。
悪くないけど、良くもないというか。
印象に残らないんである。
軽すぎて。
え?これでブラックなの?じゃあ、ブラックじゃない香水ってどうなっているの?と思ってしまったほど。
次から次へと試すものの、やはり、どれもこれもダメ。
もう試すものが何もないのではないかと思った時に店員さんが「そういえば…」という感じて取り出した香りがあった。
「これ、正直、日本ではあまり人気がない香りなんですけど」
とのことで、どうやらあまりにも人気がなさ過ぎて、店員さんが忘れていたくらいなんである。(どんだけ人気ないんだよ!と突っ込み入れたくなったけど)
そうしたら、もう、それが非常に素晴らしかったんである。
やだ!ジョー、やるじゃん!やればできるじゃん!褒めてつかわすと思ってしまうくらい素敵な香りなのだ。
ムエットで試して良かったので、肌に載せてもらったら、やはり良いものは良い。
トップは苦手な柑橘系の香りなのだが、それよりも、肌の上ではスパイスが効くのだ。
ぴりっとしたスパイスの中にほんのりと甘さもあって、これよこれ!これが欲しかったのよ!となる。
ぼくがあまりにも感激していたのだ、店員さんの方がびっくりしていた。
でも、このことを教訓に、初めて試すブランドに行った時は、まず最初に「一番日本で売れない香りから試させてください」と言うようにしているほどだ。
でも、いくらぼくが好きだといっても、やはり売れないものは売れないらしくて、今は日本での販売はなくなってしまった。

Note

Olibanum, Lemon, Pepper, Labdanum, Elemi, Benzoin

ペッパーの香りがかなりぼくの肌の上ではピリッと感じる要因になっているのだろう。

My Evalution

★★★
えーと、最初は良いのよ。ピリッとするのよ。でもね、残念なことにぼくの肌の上では持続性がないの。とにかく驚くほど続かない。かすかに肌の奥にピリ辛感が残る程度。やっぱりぼくはこのブランド、合わないのかなぁ。