第373夜 Papyrus Moleculaire

静かな煙と紙の競演

 

DATA

Name:Papyrus Moleculaire
Brand:Maison Crivelli
Lauched in 2020
Perfumer:Leslie Girard


My Episode

2022年、伊勢丹のサロンドパルファンは、本当に楽しい香水イベントで、今でもぼくはその時の余韻に浸ることができる。
なぜなら、まだまだその時に購入した香水を少しずつこうやってブログで紹介することができるから。
短期間の間に沢山の香水を購入してしまうと、じっくりと一つ一つの香りと楽しめないという意見ももちろん、良く理解できるのだが、その時にしか購入できない香りもあるし、香りと言うのはタイミングというのもあると思う。
買うタイミングが重なることだってあるのではないかと思うのだ。
ぼくの鼻はサロンドパルファンに焦点が合っていたのだから、一度にたくさんの香水を買ってしまったのは、不可抗力だと勝手に思っている。
でも、それらの香水を思い出を反芻するかのように取り出して楽しむというのもまた楽しいものだ。
さて、今日ご紹介する香水もそんなサロパで購入した一本。
久々に肌に載せてみたのだが、やっぱり良い。
パピルスと名付けられているので、紙の香りがモチーフになっているのだが、恐らく、香りの下の方に感じられるグリーンな部分がそのパピルスに当たるのではないだろうか。
グリーンが苦手なので、夏の暑い時期はその部分がひょっとしたら出てしまい、苦手になるかもしれないので、これはぼくにとっては冬限定の香りになるかもしれない。
そして、タバコの香りがとても強いので、前回ご紹介したエラケーのエプパモナムールのような包み込むような温かみが感じられる。でも、エプパほど甘くはないので、甘さが苦手な人はこちらの方をお勧めする。
まだ少し寒い日もあるようなので、そんな日に纏ってみたい香りだ。

NOTES

Papyrus, Elemi resin, Black Pepper, Tobacco, Coriander, Amyris, Olibanum, Tonka Bean, Carrot Seeds

もちろん、すべての香料をこの素人の鼻がかぎ分けられるわけではないが、それでも、これらの香料を見ると、なるほど、この香りの感じはこの香料によるものなのかな、と妄想することができるので、こういう香料の表記は非常に参考になる。

My Evalution

★★★★
全天候型、全季節型ではなく、ちょっと限定されるという意味で星4だが、非常に好みの香りであることは間違いない。

第372夜 Epupa Mon Amour

優しい煙に包まれて

 

DATA

Name:Epupa Mon Amour
Brand:Ella K Parfums
Lauched in 2018
Perfumer:Sonia Constant
70ml ¥28,600

My Episode

スモーキーな香りが好きだ。
でも、ただスモーキーな、甘さが感じられない煙は苦手で、甘い煙が好き。
そして、この「エプパモナムール」は、そんな甘いスモーキーな香りだということをネットで知り、すごく興味が出て来た。
しかし、時すでに遅し。
日本での販売は在庫限りで終了だと知り、非常に残念に思った。
でも、まだ試したことがなかったので、新宿の伊勢丹に行き、事情を話して、もしサンプルがあったら試させてほしいとお願いをしたら、サンプルだけはあるとのことで、試香させてもらった。
そうしたら、「なんで今までこの香りに気づかなかったの!バカ!バカ!バカ!」と自分の鼻を呪った。
そうしたら、いつも良くしてくださっている担当の方が「ひょっとしたら他店にあるかもしれないので、調べてみましょうか?」と言ってくださり、大阪の阪急メンズ館に2本だけ在庫があることを教えてもらった。
ちょうどその時期、ぼくは大阪でのサロパに行くことになっていたので、鼻息も荒く、大阪に乗り込んだのである。
売り場で再び試して、大阪まで買いに来て本当に良かったと思ったほど、この香りは素晴らしい。
トップから乾いたような煙を感じ、さらにしっかりと甘い。
ぼくはこの手の香りが好きで、例えばラルチザンのボア・ファリヌのような香りなのである。
寒い時期に纏うと、やさしく毛布でくるまっているような、そんな感覚。
そして、これは、ディプティクのタムダオにも通じるものがあり、こういう香りは必ず常備しておきたいと思う。
冬っぽい感じもするが、乾いた香りでもあるので、湿度の高い夏の時期に纏うと、しっかりと湿気を取ってくれるような、そんな気がする。

NOTES

Vetiver, Sandalwood, Black Pepper, Cumin, Amber, Guaiac Wood, Tonka Bean, Vanilla

甘さとスモーキーさが香料からも想像できる。しかも、その甘さを引き立てるのにクミンやブラックペッパーが使われているのだろうか。

My Evalution

★★★★★
文句なしの星5。肌に載せると、ずっと鼻を近づけていたいほど。乾いた肌の香りにも似ていて、そこが中毒性があるのかもしれない。

第371夜 Melodie D'Altai

バランスの良いレザーの香り

 

DATA

Name:Melodie D'Altai
Brand:Ella K Parfums
Lauched in 2018
Perfumer:Sonia Constant
70ml ¥28,600

My Episode

2022年のサロンドパルファンで3種類の新作レザー系香水が出たのだが、実はすでにエラケーでは定番のレザー系香水が出ている。
それが今日ご紹介するアルタイのメロディーである。
この香り、もちろん、ぼくはすでに試していたのだが、気になっていたものの、なかなかタイミングが悪くて手が出せないでいた。
エラケーには他にも気になる香りがいっぱいあったし、そちらにばかり気を取られていて、買えなかったというのもある。
あと、時期的な問題。アルタイのメロディーはかなり重めの方なので、夏の暑い時期には、なかなか食指が伸びないのだ。
だが、2023年に入り、冬の寒い時期が続いていた時に試してみたら、非常に肌にフィットしたので、やっとお迎えしたのである。
順番は前後してしまったが、Harmattan、Khamsin、Ghibliときて、「Melodie D'Altai」で締めるという感じで自分の中では非常に納得する買い方だと思っている。
そう、アルタイのメロディーはバランスがものすごく良いので、日本では限定で出たレザーの総まとめという感じなのだ。
これが日本でも定番なのは、レザー系でありながらも、日本の人にも受け入れられるという算段があったからなのではないかとぼくは勝手に思っている。
甘さも十分にあるし、深みも感じられるし、ちょっとスモーキーでウッディなところもまた魅力だ。

NOTES

Leather, Amber, Styrax, Saffron, Vetiver, Patchouli

ぼくの好きな香料が4つも入ってる!そりゃあ、好きになるわけだ。でもやっぱり夏はあまりつけにくいと思うので、まだまだ寒いこの時期にたくさんつけておきたいと思っている。

My Evalution

★★★★★
エラケーのレザーの集大成という感じで購入したアルタイのメロディーは、バランスの取れたレザーだし、つけていて安心するところもある。きっとこれからも何かとお世話になりそうな予感がする。

第370夜 Ghibli

軽やかな甘さの中に潜むレザー

DATA

Name:Ghibli 
Brand:Ella K Parfums
Lauched in 2021
Perfumer:Sonia Constant
日本限定発売

My Episode

本国では2021年に登場したエラケーの3作の新作香水のテーマはレザー。同じレザーでもこんなにも違ったニュアンスの香りを生み出せるのか!と驚いてしまう。
その3種類の中で最も日本で人気だったのが、この「ギブリ」だ。
限定で発売された3種類の中で、この香りが真っ先にSOLD OUTになったらしい。
で、ぼくもこの香りを試してみて、一番これが売れるだろうなという予想はできた。
非常に華やかな甘さがある。華やかでもあり、花やかでもある。その甘さというのは、フローラルな甘さなのだ。日本の女性が大好きなフローラル系。
でも、ソニア姉さんは、単なるフローラルでは終わらせない。そこにレザーの渋さを潜ませたのだ。
だから、ぼくのようなフローラルが苦手な人間の鼻も満足させられるというわけ。
つまり、この香りは華やかで、花やかで、鼻やかだということ!
Harmattan=最重量、動物的、甘さ控えめ
Khamsin=中重量、フルーティーな甘さ
Ghibli=軽量級、華やかな甘さ
といったところだろうか。
でもね、このGhibliも、トップノートだけで判断してはいけないと思う。なぜならお花が好きな人にとってみると、革の香りはちょっときつく感じられるかもしれないから。ラストの方でそういう革の香りがほんのりと感じられるので、そのあたりの見極めをしておきたいところ。

NOTES

Nougat, Leather, Jasmine

ジャスミンと知って、なるほど!と納得。確かにジャスミンのエキゾチックな香りはものすごく感じられるから。でも、ヌガーは意外だった。言われてみれば、この甘さはグルマンな感じなので、納得できるが、ヌガーとは思わなかった。

My Evalution

★★★★
ぼくにはちょっと甘さが華やか過ぎるかなという感じがする。甘いの大好きだけど、もう少し影が欲しいところ。つまり、ぼくは香りに関しても、非常にうるさいのだ。甘すぎちゃダメだし、甘さがないのもNGだし…。
ところで、Ghibliは、日本ではスタジオジブリで有名ですが、もともとアフリカ北部で吹くサハラ砂漠からの乾いた熱風のこと。
これらの香水はレザー系ではあるけれども、暑さに似合う香りかもしれないので、今年の夏はちょっとちゃんとお世話になろうかなと今から期待している。



第369夜 Khamsin

甘くて重い至福の香り

DATA

Name:Khamsin 
Brand:Ella K Parfums
Lauched in 2021
Perfumer:Sonia Constant
日本限定発売

My Episode

2022年の伊勢丹サロンドパルファンでは、エラケーから3種類の香りが限定で発売された。その3種類というのが、レザーシリーズ。しかも、それぞれに風の名前がついているという。
もうね、ぼくはそれだけで期待に鼻腔が開きっぱなしだったのだ。だって、ウードと同じくらいぼくはレザーの香りが好きだから。
しかも、そのレザーの香りをベースにした3種類の香りが出るなんて、期待しない方がおかしい。
レザーとひとことで言っても、表現の方法は様々だろうし、ぼくも今までに様々なレザーの香りを試してきたから、その3種類のレザーがどんなふうに変化するのか、ものすごく興味があったのだ。
そして、サロパが始まる前に事前にサンプルを試させてもらったところ、ぼくの鼻がまっさきに受け入れたのがこの「Khamsin」だった。
肌に載せたとたんに熱い風が吹いた!
というと大げさだけど、でも、独特の南国の香りを感じたのだ。
甘いけど、熱くて、重い。そんな香り。
ちょっとラム酒とか、そういう感じの丸みのある甘さも感じられる。
レザーだけだと、アニマリックで重いだけになるけど、そこにその重さに合う甘さが加わると、ぼくの鼻は本当に安心するのだ。
ぼくに必要なのは、甘さなのかもしれないと最近思っている。

NOTES

Leather, Orange Blossom, Dates

この甘さはデーツなんだ!と香料を見て納得した。南国っぽさはこのデーツの甘さから来るものなのだろう。数年前にアブダビに行った時にデーツを食べて、すっかりそのとろりとした甘さにやられてしまったのだが、その甘さをしっかりと感じられる。

My Evalution

★★★★★
これは文句なしの、迷いなしの★5つ。鼻が喜ぶ香りというのは、こういう香りのこと!
そして、Khamsinとはエジプトで春に吹く南寄りの風邪のことなのだとか。デーツというのもそのエジプトや中東でしばしば食される果物だから、きっとそういうところにこの香りらしさというのが出るのだろう。

第368夜 Harmattan

変化が激しい革の香り

DATA

Name:Harmattan 
Brand:Ella K Parfums
Lauched in 2021
Perfumer:Sonia Constant
日本限定発売

My Episode

自分の中でこんなにも評価がころころと変わる香りも珍しいと思うくらい、この「Harmattan」はユニークな香りだ。
とにかく、トップとラストの香りの変わりようったら!しかも、それが変態っぽい変化をするから面白い。
どんな風に変態かというと、トップは非常に爽やかでさっぱりとした香りなのに、ラストはアニマリックに豹変するのである。
この香り、昨年の伊勢丹で開催されたサロンド・パルファンにて、限定で発売されたものなのだが、事前に試す機会があり、その時に肌載せをしてみたら、トップはものすごくすんなりと(シトラスなのに、ちょっと影のある感じがたまらなかった)受け入れられたので、他の2本の限定香水とともに予約リストに入れておいてもらったのだが、伊勢丹を後にして、家に帰りつくころには、香りが大きく変化していることに気づいた。
なんだか、非常に獣臭い。なんていうか…。外国人のワキガのにおいとでもいおうか…。そんな獣のような香りがして、ちょっと「too much」な感じになった。
正直、予約をキャンセルしようと思ったほど。
でも、せっかく予約をしたし、限定だし、二度と手に入れることはないのだから…と思いなおし、そのままサロンドパルファンで購入をすることにした。
その後、ぼくは何度もこの香りを肌載せしてみたのだが、そのたびに自分の中で「好き!」となったり、「やっぱり苦手!」となったりして評価がまったく定まらなかった。
これを書いている今でも、右手内側に載せた香りを何度もかぎながら、評価をどうしよう…と悩んでいる。
トップのシトラスに陰があるというのも、実はラストのアニマリックな香りを予感するような香り立ちだ。
これが単なるシトラスだったら、ぼくは見向きもしなかっただろう。
そして、ラストのこの独特のアニマリックな香りは、革の香りで、それがアニマリックな革の香りなのだ。あまさはそれほど感じ取れず、だからぼくの鼻腔は獣の香りばかりを感じ取ってしまうのだろう。
でもね、その日の気分や体調によって、この香りに対する評価が全然変わってきて、すんなりとこの獣臭さを受け入れられる時もあるから侮れない。

NOTES

Geranium, Texas Cedar, Leather

明かされているのは、この3種類の香料のみ。ゼラニウムがトップの爽やかさを演出しているのだろう。そして、やはりレザーとシダーがこの香りの中核となる獣臭さの主要因であることは間違いない。

My Evalution

★★★
評価は悩みに悩んで、★3つ。でも嫌いじゃない。
ちなみに、ハルマッタンとは、西アフリカで吹く貿易風のことで、湿気を奪うほどの乾燥した風のようだ。細かい砂塵を含んでいて、北アメリカ大陸まで届くのだとか。
そんな貿易風に想いを馳せて肌に載せると、またなんか印象ががらりと変わってくる。湿度の高い夏の時期に纏ってみたらどうなるだろう?ちょっと楽しみだ。

第367夜 vainly

大人甘いスモーキーな香り

 

DATA

Name:vainly
Brand:KOHSHI
Lauched in 2021
Perfumer:Matsuno Hidenori(松野 秀至)
50ml ¥18,700

My Episode

実際に嗅ぎ比べてみると異なる香りであることが明確にわかるのかもしれないが、肌の載せた瞬間に、昔に嗅いだことのある香りをその香りの中に感じて、「似ている!」と思ってしまう香りというのはたくさんある。
しかもその印象というのは人によって異なるので、なかなか理解されないことも多いのではあるが。
この「vainly」を肌載せした時にぼくがまっさきに思い出したのは、ブルガリのブラックである。
ぼくにとってはあの香りは本当に衝撃的で深く鼻腔に刻み込まれた香りでもあるので、余計にそういう想いを抱くのかもしれない。
以前にもご紹介したミルコブッフィーニの「OG」を試した時にも、ぼくはまっさきにブラックを思い出したのだが、今回の「vainly」も似たような印象を持った。
今回の場合は、それはトップのほんの数秒間のことだけで、すぐに違う香りが出てくるのではあるが、第一印象のスモーキーな甘さというのは、どこか共通点があるような気がする。
そして、サロンドパルファンでもこの香りは非常に人気だったように記憶している。
多くの人たちから好まれる甘さなのだ。
その甘さというのは可愛らしい甘さではなく、もっと大人っぽい。サイトを見るとビターチョコレートの写真が掲載されているのだが、まさにそんなビターな甘さを感じる。しかも、タバコの煙たさもしっかりあり、これは酸いも甘いも噛み分ける大人だからこそ似合う香りなんじゃないだろうか。でも若い人にもこういう香りはぜひ積極的につけて欲しい。ちょっと背伸びをしたい時とかにこういう香りも似合うのではないだろうか。

NOTES

Top notes:Yuzu,Bergamot,Lemon,Davana
Middle notes:Chamomile German,Jasmin,Pine needle,Rose 
Base notes:Tabac,Musk,Vanilla,Chocolate,Leather

この香りの中核をなすのは、ラストのタバックやチョコレート、レザーなのだが、トップの柚子もまたミドル、ラストにもかすかに残っていて、香りに変化をつけているように思う。

My Evalution

★★★★★
とにかく、かっこいい香り。甘くてかっこいい香りというのは、本当にぼくの肌に似合うと勝手に思っている。ぼくにとっては、自分をより引き上げてくれる、これはそんな香りなのだ。