第32夜 La Couche du Diable

悪魔の寝床で見る夢は…

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DATA

Name: La Couche du Diable(悪魔の寝床)
Brand:Serge Lutens
Launched in 2019
Perfumer:Christopher Sheldrake
50ml 22,000 円

My Episode

「ウードが好きだったら、健さん、絶対にこの香りは好きになるはずだよ」と言われる香りがいくつかある。
そして、その友人の予言通り、すっかり好きになってしまい、即決する香りも多い。
しかし、この「悪魔の寝床」に関しては欲しいと思ったにもかかわらず、なかなかお迎えするタイミングが訪れず、数ヶ月待たなくてはならなかった。
そのいきさつについて書いてみたいと思う。
ぼくのウード好きを知って、ある香水好きの友人に「ルタンスの悪魔の寝床を試してみて」と言われ、ぼくはそのタイトルにまず強烈な印象を受けた。
だって、「悪魔の寝床」だぜ?

このぼくが興味を示さないわけがないではないか!
そんな寝床が都内のあるのなら、すぐにでも寝に行きたい!

なんなら悪魔と添い寝したい!とすら思った。
だから、その話を聞いて、いてもたってもいられなくなったぼくは、その数日後、銀座のセルジュルタンスのお店に一人で行ってみた。
2020年の8月のことで、新型コロナウィルスの影響でお店の中には時短営業をしていたり、様々な感染対策を施していたりするような状況下でお店を訪れたのだ。
地下に降りていくようになっていて、何となく敷居が高い感じもして、さらにお店は薄暗くて、気後れしたものの、どうしても「悪魔の寝床」に横たわりたいぼくは試してもいないのに買う気満々でお店に入った。
そこにはお上品そうなスタッフの方がいて、消毒のあと、なんと使い捨ての薄いビニールでできた手袋を渡され、感染予防のため、手袋をするように言われた。
結構感染対策は徹底しているのねぇ、と思いながら、そのスタッフに「悪魔の寝床」を試したいと告げ、早速試すことになった。
ところが、ここで問題が生じた。
なんと、店内では空気に香りが残ってしまうので、スプレーで試すのではなく、ムエットに直接液を付けて試すのだという。
え?と思いつつ、まぁ、そういうお店の方針だったら仕方がないと思いつつ、ムエットにこすりつけられた香りをためしてみた。
うん、もう間違いなくぼくの好きな香り。
でも、ムエットと肌の上では香り方はまったく違うので、肌に載せたいと言ったら、別のムエットにもう少し多めに液体をしゃかしゃかとつけて、それを肌の上にこすりつけるようにして載せることになった。
もう、その段階でぼくは買う気が失せていた。
だって、そんな香りの試し方今まで一度もしたことがなかったんだもの。
さらにお店の方の対応もあまり心地の良いものではなかった。
ウードのことをずっと「ウッド」「ウッド」と言っていて、「ウッディーな香りがお好きなら」という感じの説明の仕方だったのだ。これは非常に良くありがちなのだが、「ウード」と「ウッド」の区別のつかない店員さんが少なからずいて、もう、それだけでぼくはげんなりしてしまうのだ。
なので、ぼくは非常に残念な気持ちで「悪魔の寝床」をお迎えすることもなく、お店を後にした。
あまりにも対応がひどすぎたので、別の日に香水好きの女友だちと一緒に行った。別のスタッフが対応してくれたが、やはり非常に残念な結果になってしまい、一体このお店の店員さんはどういう教育を受けているんだろう?殿様商売なのだろうか?それとも、そういうスノッブな対応がウリなのだろうか?と思ってしまった。
セルジュルタンスは伊勢丹のメンズ館にもあるので、後日、ぼくは気持ちを切り替えて、そちらに行ってみた。
ところが、その時に対応してくれた店員さんも知識のない人だった。「悪魔の寝床」の説明を聞こうとしたら、いきなり資料のようなものを目の前で広げるのよ。
唖然とした。
ある程度の知識があって、それを説明する中で、より確かな情報を得るために資料を確認するのであれば、全然問題はないのだが、最初から資料を目の前で広げられると、それだけで「あ、もういいです。自分で調べればわかることなので」という気持ちになる。
そんなこんなで、ぼくはしばらくの間、この「悪魔の寝床」はお預け状態になる。
香りそのものはぼくの大好きな系統だし、もう、悪魔と添い寝する心の準備はできているというのに!
そんな矢先、銀座の資生堂で香水にまつわるイベントがあるというので、香水好きの方々のお誘いを受け、そのイベントに参加してみた。そのイベントは直接的にはセルジュルタンスとは関係なかったのだが、セルジュルタンスは資生堂とセルジュルタンスが共同で開発したブランドで、資生堂でも取り扱いがあるので、銀座の資生堂でも香りを試すことができるのだ。
そして、その時の店員さんが、セルジュルタンスの銀座店のスタッフよりもはるかに感じが良くて、商品知識も豊富で、ぼくはもう迷わずそちらでやっと「悪魔の寝床」をお迎えすることができたのだ。
(その時、ご一緒した香水好きの人たちはぼくがどれだけ興奮しながらこの香りをお迎えしたのか良く覚えているだろう。それぐらいぼくは興奮したのだ。スタッフの方と話をしたり、お会計をしている間中、ずっと子どものようにはしゃいでいたから!)
そして、早速、その晩、この香りを添寝香水としてまとってみたら…。
案の定夢を見た。
それも、非常に個性的な深い夢。しかも、とてもリアルな夢だった。
それから、ぼくは何度となくこの香りとともに寝ることになるのだが、そのたびに、朝起きた時に記憶に残るくらいの夢を見るようになった。
まぁ、「悪魔の寝床」というタイトルの暗示というのも少なからずあるのかもしれないが、とにかく、ぼくにとってはこの香りは一緒に寝たくなるくらいセクシーで濃厚な香りになったのだ。

NOTES

Labdanum, Woody Notes, Agarwood(Oud), Amber, Cinnamon, Saffron, Orange, Tangerine, Rose, Musk

この香りを肌に載せたとたん、体温が一度あがるような感じになる。

濃厚で重い香りなのだが、非常に温かみがあるのだ。スモーキーさもあり、クリーミーな感じもする。きっとそれはアンバーのせいだろう。さらにシナモンのスパイスの効いた甘さがだんだんと立ち上ってくる。悪魔というと非常に強烈なイメージがあるのだが、この香りはそういうクールな感じではない。

ただ、逆にこの温かさというのが、寝床っぽくて良いのだ。グルマンな側面もあり、ラム酒っぽさもあるので甘い香りが好きな人にもおすすめ。

きっとこの香りはこれからもぼくにとってはなくてはならない香りになると思う。

My Evalution

★★★★★