第36夜 Timbuktu

夏の暑さに似合う媚薬の香り

 

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DATA

Name: Timbuktu(タンブクトゥ)
Brand:L'Artisan Parfumeur
Launched in 2004
Perfumer:Bertrand Duchaufour
100ml ¥18,700

My Episode

ベルトラン・ドゥショフールのことを初めて知ったのは、ラルチザンパフュームと出会ってからなのだが、彼はラルチザンで実に多くの名香を作り出している。ひょっとしたら、ラルチザンで一番香水を作っているのはベルトランなのではないだろうか。さらに言うと、ベルトラン自身も、他のどのブランドよりも、数多くラルチザンで香水を手掛けている。
恐らく、ラルチザンの自由でストーリー性のある香りのコンセプトがベルトランとぴったりと合ったのではないかと思っている。
さて、このタンブクトゥも、実に個性的な香りである。
一度かいだら忘れることができない。
例えば、香りを表現するのに、フローラル系とか、スパイス系とか、ウッディ系、あるいは柑橘系というだいたいの方向性を示すことが大半なのだが、このタンブクトゥだけは、何々系と言えない部分がある。
しいて言えば、エキゾチック、あるいはオリエンタルな香りとなるだろうか。だが、さらにそこから先、どのように分類すれば良いのか。
少し甘さもあるので、オリエンタル・フローラルとなりそうなもんだが、花の甘さとは少し違う。じゃあ、オリエンタル・ウッディーとなるかというと、深みあるものの、それはウッディというのとはまた違うような気がする。
つまり、この香りは分類不可能。
南アフリカマリ共和国で、恋人を虜にするという媚薬をイメージしたというストーリーを聞くと、この「タンブクトゥ」が分類不可能な理由がわかる気がする。
この香りは今でも好きで時々つけるのだが、数年前、新派の公演を見に三越劇場に行った時のこと、終演後、帰りの支度をしていたら、隣の女性が、「失礼ですが、どこの香水をつけていらっしゃるのですか?あまりに素敵だったので」と声をかけてもらい、タンブクトゥのことを教えてあげた。
きっと彼女の記憶ではあの時の『黒蜥蜴』の公演とこの香りがきっとリンクしているに違いない。

NOTES

Top notes: Mango, Pink Pepper, Cardamom
Middle notes: Incense, Papyrus, Karo Karounde
Base notes: Vetiver, Myrhh, Patchouli, Benzoin

まろやかでクリーミーなトップノートの香りはマンゴーの香りがかなり強く感じられるからなのだろう。さらにそこにピンクペッパーやカルダモンといったスパイスが加わることで、この香りの輪郭が出来上がっているのだと思う。ベースノートのパチョリやベンゾインにより、どっしりとした深みと媚薬のような色気のある香りが作られているんだなということが調香を見ただけでわかる。
タンブクトゥは何となく南国の香りのイメージが強くて、色々な人たちの投稿を見てみると、ハワイを思い出すとか、夏のバカンスにつけていきたい香りという文章が見受けられる。ぼくも夏になるとこの香りをつけたくなることが多くなるので、それはおそらく、マンゴーと、南アフリカという暑い国の香りをイメージしているからなのかなという気もする。
旧ボトルのラベルの色も大好きなターコイズ色で、それも南国チックなのもまた魅力の一つだ。

My Evalution

★★★