第39夜 SKIN ON SKIN

人の肌の香りは獣の匂い?

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DATA

Name: SKIN ON SKIN(スキンオンスキン)
Brand:L'Artisan Parfumeur
Launched in 2013
Perfumer:Bertrand Duchaufour

My Episode

特に嗜好品に関しては、好き嫌いというものが顕著に出るものだが、香りもまた好き嫌いがはっきりと分かれる。ぼくの場合は、この好き嫌いがかなりはっきりしていることはこのブログを読んでくるとわかってくると思う。
日本人に人気の柑橘系の香りというのがほとんどないのである。
むしろ日本人にあまり受け入れられない香りの方が多い。Agarwood(Oud)なんて、まさにその典型。
ところが、ぼくの場合、好き嫌いがはっきりとしているものの、それが覆されることがままある。
嫌いだと思っていた香りが、突然好きになるということはラルチザンパフュームで散々経験してきた。
今は大好きな「パチュリパッチ」だって、「アルード」だって、最初はかなり抵抗があった。
どちらも調香師はベルトラン・ドショフールなので、きっと彼の作る香水というのは、他の調香師のそれと比べるとかなり奇抜で個性的だから、余計にそのふり幅というものが激しいのかもしれない。

さて、今日ご紹介する「スキン・オン・スキン」もまさにそんな香りだ。この香水は、感情の爆発(EXPLOSINS D'EMOTIONS)というシリーズでリリースされた3本のうちの1本だ。
このシリーズの第1弾となるこちらは他者と自分の関係を香りで表現したもの。
その他者との関係の中でももっとも感情に働きかける「恋愛」にフォーカスしているところが特徴的だ。
出逢った時のときめきや衝撃を表わしていたり、肌と肌が合わさった時の感覚を表現していたり、しばらくふたりの関係が深まった後の感情を香りに託していたり。
そして、この「スキン オン スキン」は、タイトル通り、二番目の
ふたりの肌が触れ合った時の感覚のようなものを表わしているのだとか。
だから、とても官能的。
ざわざわとした感情をかきたてられる香りだし、さらに、何とも言えない、不思議な、それまで香水では味わったことがないような独特の感覚がくすぐられるところが面白い。
このシリーズの3本の中で、この「スキン・オン・スキン」だけがぼくから一番遠い場所にあった。

その時のパンフレットに掲載されていた文章は次の通りだ。

 

SKIN ON SKIN

センシュアルなアイリスに、サフラン、ウィスキー、ムウク、ローズが複雑に絡み合った感情あふれる香り。
スエードとベルベットを思わせる魅惑的なタッチで、眠れる本能を心地よく刺激します。

香調:レザー、フローラル、ムスキー

調香師:ベルトラン・ドゥショフール

 

初めてムエットでこの香水を試した時、ぼくは思わずむせてしまった。レザーの香りとアニマリックな香りがあまりにも強烈で、「何なの!?この変な香り!」的な衝撃があった。その衝撃は良い意味ではなく、どちらかというとあまり良くない衝撃。
肌に載せて試すこともせずに毛嫌いしてしまい、その状態がしばらく続いていた。
このエクスプロージョンシリーズが発売された頃は、ぼくがラルチザンの香水を少しずつ集め始めていた頃で、お値段が高いこのシリーズは後回しになっていたのである。

お店に行くたびに試していたものの、この香水だけはムエットだけで試し、そのたびに挫折していた。嫌い嫌いと言いつつも、ムエットだけは試していたぼくの姿に痺れを切らしたお店のスタッフに「健さん、肌に載せてみたら?」とアドバイスされて、思い切って左手首の内側にプッシュしてもらったのだ。
すると、びっくり!
ムエットで感じられたレザーの香りやアニマリックな雰囲気はぼくの肌の上ではまろやかに甘やかに変化することが判明したのだ。
それをすすめてくれたスタッフですらびっくりしてた。
ケンさんの手首をサンプルにおいておいて欲しいくらい、素晴らしい香り!とまで言ってくれた。
それまで何人もの人がその香水を肌の上に載せたけれども、その誰とも違う香りがするのだとか。
ぼくの肌は日本人にしては珍しいウッディー系なのだが、まさにそのウッディ系との相性が良いみたいなのだ。
ぼく自身もあまりにもその香りにクラクラッとして、ついにお買い上げ。
そして、ぼくにとってはこれが最初のエクスプロージョンシリーズとなったのである。

こういった独特の、非常に男性っぽい香りは、自分というものをきちんと持った人におすすめ。
自分がどんなことが好きで、どんな風に生きたいのかということが明確な人ほど、この香りはそのライフスタイルをよりスタイリッシュに仕上げてくれる。流行に左右されず、自分なりの確固たる信念を持っている人に使って欲しい。
そして、非常にジェントルマンな香りだけど、逆に女性がつけてもまた似合う。
凛とした女性。
あるいはグラマラスな女性。
料理は作れるけど、男のために肉じゃがなんか作ってやらないわ!
っていうような女性(笑)。

最近は他につけたい香りがありすぎて、纏う機会がなかったのだが、久々にこの香水もつけてみたいと思う。
特に今日みたいな少し肌寒い夜には人肌が恋しくなる。
そんな時にこの香水は非常に効果的だ。

NOTES

Suede, Iris, Whiskey, Musk, Saffron, Rose, Lavender

具体的な調香は明かされていないが、上記の香料がFRAGRANTICAには記載されていた。しかし、これだけでこの香りがどれだけ個性的なのか、ということがわかるだろう。

My Evalution

★★★★