第73夜 Tabac 28 Miami

一年中纏いたい渋い大人の香り

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DATA

Name: Tabac 28 Miami (タバック28)
Brand: Le Labo
Launched in 2019
Perfumer: Frank Voelkl
50ml ¥38,500

My Episode

2006年にエディ・ロスキーとファブリース・ペノーという二人の男性によって創設されたルラボのことを知ったのはつい最近のこと。ニッチフレグランス好きの間では良く知られていたけれども、ぼくはずっと試さないまま、名前だけ知っているという状態だった。
アメリカ発のブランドって何となく触手が伸びないというか。
完全なる偏見なわけだが、そんなに騒ぐほどじゃないでしょ?と試しもせずに斜に構えていたところがある。
しかし、昨年の3月に大阪のデパートでこのブランドの香水を初めて知ってから、急に気になり始めたのだ。
それまでぼくは、例えばラルチザンパフュームのような物語性のある香水が好きで、そういう香水ばかりを追い求めていたところがあったのだが、ルラボはまったく違った観点から香水と向き合っていて、それはそれで斬新だったし、そういう香水があっても良いんじゃないかっていう気もして、それからルラボもきちんと色々と試していこう!という気持ちになった。
そして、そんなルラボから世界の都市をモチーフにした香水が出ていると知ったのは、SNSを通してだった。
本来であれば、その都市でしか買えない限定の香水が、毎年9月の一ヶ月間だけ世界中のルラボの店舗とオンラインで発売されるとのこと。
それを知ったぼくは、昨年の9月のある日、その数週間前に日本に残っていた最後の「ウード27」をお迎えした日本橋三越店に遊びに行った。
そこで、早速14種類に香水を試してみて、一番気になったのがこの「タバック28」だったのだ。
しかし、残念ながら日本橋三越店には在庫がなかったので、調べてもらったら代官山の方にまだ残っているということで、その足ですぐに代官山に向かった。
その間、ぼくはサンプルを肌に載せて移動したのだが、とにかくこの「タバック28」はぼくのテンションをあげてくれた。
ぼくの鼻腔の好物は、重くて、煙くて、甘い香り。なのだが、特にこの「タバック28」は「煙い」という点においては最高級。
しかも、その煙さが実に自然なのだ。
ぼくは重い香りが好きだから、ついついスモーキーな香水でも重い香りを好むのだが、この香りはそういう重さとは少しちがう。重いけど、乾いているから、そんなに重厚というわけでもない。とはいうものの、しっかりとタバコの香りを楽しむことができるという意味で、とても画期的だった。
代官山店に到着すると、すでにお店には数人の人がいて、すぐに中には入れなかったのだが、予約をして、数十分後には中には入れて、お店の方といろいろと話をしながら、この「タバック28」を試させてもらった。
この香水の舞台となるのはマイアミ。
マイアミといえば、ぼくが真っ先に思い浮かべるのが「マイアミバイス」という80年代に大ヒットしたアメリカの刑事ものドラマだ。サントラも大ヒットして、その中のフィル・コリンズが歌う「In The Air Tonight」という曲。
フィルの独特のかすれた乾いた声と、ダークな雰囲気の曲調がとても好きで、何度も何度も聞いていたし、リミックスバージョンまで持っているほど好きな曲。
そして、その曲とこの「タバック28」の印象が見事にぼくの中でマッチングしたんである。
マイアミというと明るいビーチのイメージが強いので、陽がさんさんと降り注ぐビーチを思い浮かべる人も多いだろう。この香りだって、トップは明るくて乾いた雰囲気を感じさせる。しかし、香りの奥底に、どこか儚さというか、そういうものが見え隠れしていて、その感じがぼくにはたまらなかった。
そして、時間が経つにつれて、ラムの大人の甘さも感じられて、そこがマイアミの黄昏時を彷彿とさせる(実際に見たことはないから、あくまでもイメージだけど)
この「タバック28」で感じられるスモーキーさというのは、タバコのそれではなく、むしろ葉巻だ。
葉巻というと、まっさきに思い浮かべるのがチェ・ゲバラ(タバコにもチェ・ゲバラのタバコがある)とか、ヘミングウェイで、まさにキューバに近い場所というイメージにぴったりと符合する。
ぼくは喫煙者ではあるが、葉巻にはまだ手を出したことがない。凝り性のぼくのことだから、きっと一度手を出してしまったら、きっとはまってしまうのは目に見えているので、敢えて手を出さないようにしている。
その分を香りで補おうという気持ちが強いのかもしれない。そういう意味で、この「タバック28」はほとんどひと鼻惚れした。
そして、2020年にお迎えした数々の香水の中でベスト5に入るほど気に入ってしまったのである。

NOTES

Tobacco Leaf, Rum, Cedar, Cardamon, Guaiac Wood, Agarwood(Oud), Vetiver

FRAGRANTICAには載っていなかったのだが、ぼくが最近熟読している「カイエ・デ・モード」というサイトに詳しい調香が記載されていて、なんと、この香りにもウードが入っていることが判明。そうか!だからぼくはこんなにもこの香りに惹かれてしまうんだ!と驚いてしまった。

cahiersdemode.com

 My Evalution

★★★★★

この香りの良いところは、煙たいのに夏の湿度にも実に似合うということ。つまり、一年中纏いたくなるほどの魅力にあふれている。冬は肌の上で温もりを感じさせ、夏は乾いた風を思わせる。実に万能な香りと言えるだろう。ずっと、ずっと纏っていたい素晴らしい香りだ。
きっと今年の9月にも日本でも試せると思うので、ぜひ多くの人に試していただきたい。
煙たい香りを求めている方は、今からしっかりメモしておくように!(笑)