第305夜 Tobak

優しいインセンスの煙に包まれて

DATA

Name:Tobak (トバック)
Brand:Maya Njie(マイヤ・エンジャイ)
Lauched in 2016
Perfumer: Maya Njie
50ml ¥19,800

My Episode

ぼくがタバコを吸うようになったのは、大人になってから。
社会人2年目の頃、新宿二丁目のゲイタウンで遊ぶようになった。夜遊び最中、例えば飲むでもなく、カラオケを歌うでもなく、何となく手持無沙汰になることが多く、そんな時に様になるのがタバコだった。タバコを吸えば、何となく場が持つような気がしたのだ。
当時は当然のことながら電子タバコなんていうものはなかったので、普通の紙巻きたばこを吸っていた。二丁目に限らず、喫茶店や居酒屋、電車、飛行機、どこでも喫煙OKだった。だから、たばこを吸っていると、煙が服につくのはざらだったし、それが平気な生活を送っていた。
今はさすがにタバコ臭いと敬遠されてしまうことも多いのだが、タバコの香りというのは、ぼくにとっては郷愁となって鼻腔にしっかりと残っている。
だから、香水にもそういったスモーキーさのようなものを求めてしまうのだろう。
さて、こちらのTABAKはそんなぼくの郷愁をかすかにくすぐってくれる香りである。
だが、あのお店にこもるような煙臭さとは無縁。
確かにスモーキーではあるのだが、非常にアロマティック。
タバコなのにハーバルで優しいのだ。
かすかな甘さも感じられ、健全で明るいタバコという印象だろうか。
タバコの概念を大きく変えてしまうかもしれない。
ぼくの好きなタバコの香りといえば、ルラボのタバックがあるのだが、そちらの方が強烈。他にもトムフォードのタバコバニラや、ラルチザンのハヴァナバニーユといった葉巻やタバコをモチーフにした香水を好んでつけているが、それらともまったく異なる。
本当に優しいまろやかな香りなんである。
だから、たとえば一人で夜寝る時とかにつけても癒されるだろう。
あるいは外に出かける時でも、静かな空間などに行くとき(例えば美術館とか観劇とか)に纏うと、自分の周りの空間だけが浄化される感じになるかもしれない。
このTABAKはタバコというよりもインセンスのような清らかさを持っているのである。

NOTES

Tobacco Leaf, Vetiver, Leather, Musk, Cinnamon, Tonka Bean
タバコリーフやレザーといった香りがしっかりと入っていながらも、トンカビーンのような甘さ、そしてシナモンのスパイシーさも隠し味となり、優しいアロマティックな香りを構成しているのだろう。


My Evalution

★★★★

個人的には、実はもっと強い、個性を強調するようなタバコの煙が好きなのだが、これはこれでまた違ったタイプのタバコの解釈という感じでなかなか良いと思う。香りに疲れた時などにふっとつけたくなる香水と言えよう。