第9夜 Nuit de Tubereuse

夏の宵闇に咲くグラマラスな花の香り…

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DATA

Name:Nuit de Tubereuse(ニュイ ド チュベルーズ)
Brand:L'Artisan Parfumeur
Lauched in 2010
Perfumer: Bertrand Duchaufour
100ml ¥21,450

My Episode

昨夜の投稿で語ったように、ぼくの初のラルチザンパフュームは、2011年の秋に出会った「アンバー・エクストリーム」だったのだが、記録によると、その後、ぼくがラルチザンの次なる香水を手に入れるのは、それから1年半後の2013年の5月30日のことである。
たまたまネットでラルチザンのことを調べていたら、表参道に路面店があることを知り、しかも、その時ちょうど、タイミングよく男性向けのイベントをやっているということで、勇気を出して行ってみたのである。
ぼくも個人的に香水は好きだったけれども、やはりどうしても香水=女性向けという印象が強くて、路面店に行くのはこのぼくでも勇気のいることだった。デパートだったらいろんな香水を試せるし、逃げ場(という言い方は変だけ)があるから気楽だが、サロンとなるとそういうわけにもいかない。
一度入ったら買わずに出ることはできないんじゃないか?っていう妙な不安感があった。
でも、男性向けのイベントだったら少し敷居が低くなるので行きやすいのではないか?と思って、思い切って行ったのである。
今から思えば、あの時そのイベントがなかったら、ひょっとしたらぼくがラルチザンにはまるのももう少し遅くなり、今のような状況にはならなかったかもしれない。
だから、あの特別なイベントを開催してくれたスタッフには本当に感謝している。
あの夜のことは良く覚えている。
梅雨間近で、少し湿った空気が漂う夜だった。
表参道の路地を入ったところにある少し薄暗い照明の店内にはすでに何人かの男性客がいたのだが、お酒なども出されていて、三々五々、スタッフの人たちと話をしていた。ぼくはお酒が飲めないので、ソフトドリンクで何となくぼんやりとお店の中で接客の順番を待っていた。
そして、ぼくの番になり、色々と話が始まった。
実はその時、そのスタッフとどんな話をしたのか、あまり良く覚えていない。ただ、おそらく、アンバー・エクストリームでラルチザンのことを初めて知ったという話はしたと思う。
そこから、ぼくの好みの香りの話をしたり、ラルチザンの説明を改めて聞いたりした。
そして、担当してくれた女性スタッフがぼくにすすめてくれたのは「バラ泥棒」という香りだった。これはのちに、ぼくにとってはかけがえのない特別な香りになるのだが、その時は全然鼻にも心にもひっかからなかった。まったくピンとこなかったのである。
そして、色々な香水を試した後にぼくが選んだのがこの「ニュイ・ド・チュベルーズ」だった。まず、ボトルに描かれたイラストに惹かれた。
これは限定のボトルだったのだが、この時にお迎えしておいて良かったと今でも思う。だって、もう二度と見ることはなかったんだもの。
だから、ぼくは空になっても捨てられずにいるのだけれども。
とにかく、ぼくはこの香りにシンパシィを感じた。
濃厚で、濃密。一度嗅いだら忘れられない印象を残す。
今でもよく言うのだけれども、ぼくは中途半端な花の香りが苦手だ。ふわふわしてて、フェミニンなものはどうしても敬遠してしまう。
それはぼくがゲイだからなのかもしれない。
もっと雄々しくてかっこいい香りに強く惹かれる。
華の香りというのもいろいろとあるけれども、この「ニュイ・ド・チュベルーズ」は、とにかく突き抜けているのだ。
「花ですけど、何か文句あるかしら?」
という潔さを感じる。
それこそ、ぼくの一番嫌っている「透明感」よりも「存在感」の方がはるかに強い。
そして、グラマラス。
その濃厚さにぼくはくらくらしてこの香りを二番目のラルチザン・パフュームとして選んだのだ。

NOTES

Top notes: Cardamom, Clove, Pink pepper, Black pepper, Citrus, Angelica

Middle notes: Green mango, Tuberose, Orange blossom, Ylang-ylang, Rose

Base notes: Broom, Musk, Vanilla, Sandalwood, Palisander, Benzoin, Styrax

ラルチザンの購入した時のことなどをまとめたノートによると、「夏向けて蒸し暑い日が続くと、重く感じられるので、冬の香りなのかもしれない」と書かれているのだが、なるほど、このぼくも、当時は割とまっとうな感想を持っていたのだなと感心してしまう。

今ではどうだろう…「こういう重い香りこそ、夏よ!夏!」と思っている。冬に重い香りをつけるのは当たり前。夏にも纏える重い香りこそが、本物の香水だと思っているところがある。

今のぼくは、この「ニュイ・ド・チュベルーズ」こそ夏につける香りだと思っている。夜、むっとした、たっぷりと湿った空気にこそ、この濃厚で甘い香りは似合うのだ。
しかも、この「ニュイ・ド・チュベルーズ」のすごいのは、トップのピンクペッパーが非常に良く利いていて、ピリッとしたスパイスも感じられるのだ。そこが夏の夜にぴったり。

きっと今年の夏も夜にこの香りを纏って寝ることになるだろう。

My Evalution

★★★★