第113夜 Nuit de Feu

燃えるような夜に纏いたい香り

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DATA

Name: Nuit de Feu(ニュイ・ドゥ・フ)
Brand: Louis Vuitton
Launched in 2020
Perfumer: Jacques Cavallier
¥49,500

My Episode

夏の暑さに似合うのは、軽めのシトラス系の香り…。
そう思っていたのは20代までだ。
ぼくはもともとシトラス系の香りが非常に苦手だ。
トップノートで他の香りを引き立てるためのベルガモットなどは許せるけど、シトラスがメインとなるような香りはぼくの鼻腔が拒否反応を示してしまう。「なんだ、このあざとい香りは!誰からも好かれようと思ってんじゃねぇよ!」とぼくの鼻が脳に指令を出すような感じとでも言おうか。
そして、実際にぼくの肌にはシトラスは似合わない。
汗かきのぼくの肌の上でシトラスは苦みを増すばかりで爽やかさとは無縁になってしまうのだ。えぐみばかりが残って、自分が自分でないような気持ちになる。
だから、必然的に夏でも比較的重い香りを探してしまうことになる。
といっても、当然、重い香りにも色々あり、夏には不向きなものもたくさんある。
さて、今日ご紹介するルイ・ヴィトンの「ニュイ・ドゥ・フ」はぼくにとっては夏にこそ纏いたいウード系の香りだ。
「Nuit de Feu」とは、日本語に訳すと「火の夜」という意味になる。なんだか、その名前と宵闇を思わせるボトルの色を見ただけで、隠微な香りを妄想してしまうぼくは、やはり香水異端児なのかもしれない。
そして、この香りは冬も良いけど、夏の夜にこそ纏いたい香りだ。
ひょっとしたら、一般の善良な香水好きな人たちからするとこの香りは「げ!重いよ!」ってなるかもしれないが、ぼくからすると、この重さは湿度や暑さと見事に調和する重さだと思っている。
その要因は控えめな甘さにある。
確かにヌメ革独特のかすかな甘さが潜んでいるものの、それがべたつかないのだ。
しかもぼくのバキュームスキンと呼ばれた香りを吸収する肌の上ではぴったりと香りが肌に張りつき、あたかもぼくの体臭かのように内側から香る。
だから、重く感じられないのである。
もちろん、これは周りの人たちがどう感じるか、というのは別の話で、あくまでもぼく自身が感じる香りの感想ではあるのだが…。
重くて官能的でありながらも、べたつかないというのは、やはりルイ・ヴィトンのウードがそれだけ高級だということの証だろう。
これから訪れるぼくの苦手な夏の夜の暑さも、この香りをまとって味方につけてしまおうかと思っているところだ。

NOTES

Incense, Olibanum, Leather, Agarwood(Oud), Musk

独特の革の香りがミドルからラストにずっと残るのであるが、アニマル臭がするので、そこが好き嫌いを二分するのではないかと思う。ただ、いったんその香りを受け入れてしまえば、虜になるに違いない。
ある意味、危険な香りともいえる。

My Evalution

★★★★★

うん、やっぱりジャック・キャバリエによるオリエンタル・パフュームシリーズのウードは良いなぁ。「オンブル・ノマド」もぼくにとっては強烈なインパクトを与えてくれた香りだけど、この「ニュイ・ドゥ・フ」はまったく違ったアプローチでぼくの鼻を刺激してくれた。

ところで、ルイ・ヴィトンの香水には必ず自分の名前を刻印してもらうようにしているのだが、このボトルだと、KENという文字が「LOUIS VUITTON」のロゴよりも目立って、ぼくの名前がブランド名みたいに見えてしまうのが何とも不思議な感覚になる。
ヴィトンなんて、香水以外には何も持っていないというのに!