第118夜 Empathy

トップの香りに騙されないで!

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DATA

Name: Empathy(エンパシー)
Brand: The House of Oud
Launched in 2017
Perfumer: Andrea (Thero) Casotti


My Episode

銀座のNOSE SHOPで、ひときわ異彩を放っている香水ボトルがあった。
まるで恐竜の卵のような形をしたボトルなのである。
しかも、そのブランドの名前がTHE HOUSE OF OUD!
ぼくはてっきりウード系の香水を専門に扱っているブランドなのかと思ってしまい、鼻腔が3㎝ぐらい開いてしまったほど。
しかも、ブランドのコンセプトは
「このブランドは、世界でも希少と言われる天然の最高級ウード(沈香)のみを探し求める、超一流のアラブ人ウードハンターと、香料会社のイタリア人社長との友情と、飽くなきウードへの情熱がベースとなっている。」
ここで、さらにぼくの鼻腔は5㎝広がったはずだ。
だが、ところがどっこい、日本に定番で入荷しているこのブランドの香水の中にウード系の香水は一本もないんである。
昨年、ちらっと、ウード系の限定の香水は見かけたものの、その時ぼくはまさか手に入らなくなるとは思わなかったし、このブランドのこともそんなに良く知らなかったので、スルーしてしまい、今はとても後悔している。

そして、ぼくの鼻腔も一気に8㎝縮んでしまい、もとに戻ってしまったよ。
そんなハウス・オブ・ウードのウード系香水を運よく手に入れる機会に恵まれた。
こちらはなんと日本未発売の香水だ。
(日本の市場でまだまだウード系香水はニッチ過ぎて、輸入代理店もあまり冒険したがらないらしい。弱虫め!…笑)
さて、こちらの「Empathy」は、Kelem Garden collectionにインスパイアされたArabian gardenというシリーズの5本目のエディションだ。
共感と名付けられたこの香水は、ウードを使いながらも、そんなに個性が強いわけではない。むしろ「え?これウード入っている?」という意外性がある。
トップはとにかくフルーティー
爽やかで瑞々しい果実の香り。華やかで明るい印象。
これ、日本で扱ったら、絶対に売れるはずだ。
(NOSE SHOPのスタッフの皆さん、ぜひよろしく!)
ところが、どっこい、5分ほどしてくると、今度はタバコのスモーキーな香りが立ち上ってくる。この変化が非常に面白い。
ここで、香りに慣れた人は「え?何?この変化!すごくない?」と驚くに違いない。
(NOSE SHOPのバイヤーの皆さん、ぜひよろしく!)
そこからラストに向かって、とにかくどんどんウード系の重みが重なってくるのである。
だが、その重みというのも、ただ重いだけじゃない。
冒頭のラズベリーのみずみずしさを従えての重みだし、そこにタバコのスモーキーさが加わるものだから、軽やかさもある。
つまり、これはウード系でありながらも、湿度を下げる効果が期待できるし、みずみずしさも感じられるので、夏に最適なのだ。
そして、ツウの香水好きも唸らせるほどの変化球を味わえるという、なんとも面白い香り。
(NOSE SHOPのトップの皆さん、ぜひよろしく!)
ウードらしさはないので、そういうものを求めている人にとっては物足りなさを感じるかもしれない。だが、逆に言えば、ウードが苦手という人がこの香水をきっかけにウードが好きになる可能性だって秘めている。
とにかく面白い香りだと思う。
(NOSE SHOPに携わるすべての皆さん、ぜひよろしく!)

NOTES

Top notes:Raspberry Bloom, Pear Blossom, Artemisia
Middle notes:Raspberry, Tobacco, Fruity Notes
Base notes:Agarwood (Oud), Woody Notes, Spruce, Benzoin, Musk

トップの甘さに騙されないように。
でも、すぐに渋めの香りが顔を出すから、その変化を楽しんで。
ラストはウッディな香りに癒されて欲しい。
(NOSE SHOPの代表取締役の方、ぜひよろしく!)

My Evalution

★★★★★

実は、第一印象はあまり良くなかった。
トップしか感じ取れないと、ウードまで行きつかないから、物足りなく感じてしまうのだが、改めてきちんと両腕に合計10プッシュして香りの変化を楽しんだところ、あまりの面白い変化にすっかり魅了されてしまった。
ラストは癖があるけど、でもその癖がたまらなく愛おしく感じてしまうのである。
(NOSE SHOPの常連客のみなさん、ぜひお店の方にリクエストよろしく!)