第144夜 Un Patchouli

苦み走った懐かしさも感じるパチョリ。

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DATA

Name:Un Patchouli (アンパチョリ)
Brand:Obvious
Lauched in 2020
Perfumer:Anne-Sophie Behaghel and Amelie Bourgeois
100ml ¥17,600

My Episode

ウードもそうだが、パチョリもブランドによって、あるいは調香師によって解釈の仕方がまったく異なり、様々なパチョリ系の香水が存在する。甘い香り、墨汁のような香り、スモーキーなパチョリなどなど、面白いくらいに幅が広い。しかし、どこかに共通項のようなものがあり、それが「土臭さ」である。
雨に濡れた土のにおいがするのだ。
雨上がりの土から立ち上る独特の香り。
それがこの香料にはあって、最初はぼくがそれが苦手で仕方がなかった。
しかし、ラルチザンパフュームの「パチョリ・パッチ」を数ヶ月、何度も何度も店頭で試してから、やっとお迎えする頃には、すっかりパチョリの虜になってしまった。
とにかく重さを演出するのに最高の香りだからだ。
だが、パチョリもウードと同じように様々な香料と一緒に使われると、まったく装いが変わってくる。
人間で例えると、髪型や服装の雰囲気が全然違う感じ。着ている人は同じなのに、服や髪型によって、まったく雰囲気に見える。パチョリも同じで、何の香料と組み合わせるかによって、その様子はまったく違ってくる。芯が強いだけに、他の香料と比べるとその感じが非常にくっきりと出てくるのだ。

Obviousは、「白いTシャツのような香水」をコンセプトに立ち上げられたブランドで、つい最近日本に入ってきたばかりだ。ぼくはたまたま先に試させてもらう機会に恵まれたのだが、この香りを吹き付けたムエットを嗅いだとき、思わず「うわっ!」と叫んでしまったのほどだ。同室の人たちがそのぼくの反応に思わず笑ってしまうほど、ぼくはびっくりした。しかし、その後、何人かがぼくのように「うわっ!」となったので、あながちぼくの反応は間違っていなかったと言える。
非常に強いパチョリが感じられたのだ。
甘さもかすかにあるけれども、一番感じるのは苦さのようなもの。
正露丸的な何かを感じる。スパイシーさもあって面白い。
非常に東洋的なパチョリとでも言おうか。
実に不思議なのだ。
ぼくが「うわっ」と叫んだのは、その強烈な印象とともに、ぼくがパチョリを好きになるきっかけのラルチザンの「パチョリパッチ」に似て衝撃を感じたから。

 

1001perfumenights.hatenadiary.jp

 もちろん、両者はまったく違う香りなのはわかっているけれども、どこか装いが似ているところがある。
そこが実に面白い。

このObviousの「アンパチョリ」は、ヒッピーをイメージしているというのだが、ぼくはあまりヒッピー文化を知らないので、そのあたりの感覚は良く分かっていない。

ただ、なんか懐かしい感じがするのだ。どこかで体験したことのある深い香り。ほんのりとグリーン味も感じるのだが、ぼくの苦手なグリーンではなく、もっと湿度を保ったようなグリーン。

しかし、単なる甘いだけのパチョリではなく、苦みのあるパチョリは実は珍しい気もするので、これから色々な場面で試したいと思う。


Note

Top notes: Tonka Bean
Middle notes: Indonesian Patchouli Leaf, Australian Sandalwood, Virginia Cedar
Base notes: Cade oil, Tolu Balsam

吹きたての時にほんのり甘さを感じるのは恐らくトンカビーンだろう。そのあとにくるピリ辛感はシダーやサンダルウッドなどと絡み合って生まれてくるのだろう。

My Evalution

★★★★

とにかく、ぼくにとっては衝撃的な香りだった。そして、懐かしさまでも感じるパチョリはあまりないので、これから大切に使っていきたい。
ところで、調香師の一人であるAmelie Bourgeoisはぼくが最近注目している調香師だ。いくつか知らず知らずのうちに彼女の香りを持っていて、ちょっとびっくりしてしまったほど。これからも注目したい調香師の一人である。