第169夜 Tea For Two

最高級の紅茶はいかが?

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DATA

Name:Tea For Two
Brand: L'Artisan Parfumeur
Lauched in 2000
Perfumer: Olivia Giacobetti

My Episode

ぼくは、実は4年間だけサラリーマン生活をしていたことがある。
新卒で入った会社は紅茶会社だった。
元々学生時代から紅茶が大好きだったし、かなり紅茶に凝っていたこともあったので、その流れで紅茶会社に入社した。
広報企画室だったために、紅茶の資料を作ったり、実際にイベントなどで大量にミルクティーを作るような仕事もしたりしていた。
たった4年間しかサラリーマン生活は続かなかったけど、今でも紅茶は一番たくさん飲む飲料である。
そんなぼくが初めて紅茶の香水と出会ったのが、この「Tea For Two」である。

その時のことをアメブロの方でレポートしているので、まずは、それをそのままこちらに転記してみよう。

アメブロ「熱帯性恋気圧」からの転載】

香水売り場などで、好きな系統の香りは?と聞かれて、
まっさきに答えるのが「スパイス系」か「オリエンタル系」。
特にぼくが好きなのがシナモンの香り。
とにかく、シナモンを体中にふりかけたいくらいシナモンが好き。
あのピリッとした辛さと甘さを感じるすっきりとした香りは子どもの頃から大好きだった。
香水の中にも、そういうシナモン系のものは確かにあることはある。
でも、今まで、かすかにそういう香りを感じることはあっても、
実はシナモンって、個性的でありながら、他の香りと混ざると、
少し香りが奥に引っ込んでしまうような印象。
単体だとあんなに際だつ香りなのに…。

そんな中、とある7月のある日。
ふと目に留まったのが以前どこかでもらったラルチザン・パルファムでもらったカタログ。
そこに書かれていたある香水の文章に惹かれた。

「スモークティーにシナモン、ハチミツ、バニラがまろやかにとけていく薫り高きティータイム。スパイシーなアクセントが大人だけの贅沢な時間へと誘います」

もう、これは、ケンケン、買いなさい!あんたのための香水よ!
と呼びかけているようなものではないですか!
その紹介文を読んだとたん、ぼくの鼻は一気に妄想状態に突入。
シナモンティーだとかチャイだとかの香りを体にまとったらどんな感じなんだろうとか。
スパイシーな香りをいつも感じられたら素敵だろうなとか。
そして、その翌日、まずはいつも行く阪急Mens館の香水売り場へ。
鼻息あらく、「ラルチザンのTea For Twoをください!」
それに対する店員さんのひとことがぼくを失意のどん底に。
「今年のあたまに廃盤になってしまって、在庫がないんです」
目の前まっくら。
ぼくの妄想が暴走していただけに、その行き場がなくなり、その場にへたり込みそうになった。
しかも、廃盤だっつうのに、
なぜかその店員さんは「お試しになりますか?」なんていう甘い禁断の言葉を投げかけてくる。
もうこうなったら、やけっぱち。
「ふりかけてちょうだい!!!!!」と言わんばかりの勢いで試させてもらった。
両腕にツープッシュ。
ふんわりとスパイシーで、スモーキーな香りが漂う。
ぼくが妄想していた香りよりも、実は甘さは控えめではあったけれども。
でも、ぼくが愛する香りに非常に近しい感じ。
「そのサンプルでも良いからちょうだい!」と言いたかったくらい。
で、不憫に思ったのか、店員さんがいろいろと調べてくれたけど、
やはりラルチザンの日本の本社にも取り扱いはないとのこと。
ぼくは、仕方なく、売り場を後にしたんだけれども、
それでもどうしてもあきらめきれず、
わざわざ自分でラルチザンの日本の会社に自分で電話をして
(どうしても自分の耳で確かめずにはいられなかった!)
やはり、もう日本中どこを探しても在庫はないということが判明。

それからの一週間、失意の中を漂ってました。
これ、本当に比喩表現ではなく。
自分でチャイを入れて、その中に顔を突っ込んで窒息死したいくらいの気持ち。
(なんだか、今回の香水物語はだいぶ過激ですね…汗)

でも、転んでもタダじゃ起きないケンケン。
ネットでとにかく調べまくった。
確かに、どのサイトを見ても「Tea For Two」は廃盤という情報しかない。
フランス本国のサイトにも載っていないぐらいだし。

でもね、ひとつだけあるお店に在庫をみつけてしまったのです。
これはひょっとしたらあんまり公にしてはいけない、裏技的な方法なのかもしれませんが、
香水の量り売りをしているところをみつけたのです。
そこでどうやら在庫がある模様。
で、問い合わせてみたら、45mlぐらいなら量り売りOKとのこと。
もう、これは本当にラストのチャンスだと思って、思わず購入しちゃったよ。
正規に100mlを買うよりも高くついてしまったけれども。
背に腹は代えられない。
でもねぇ。
たったの45mlでラストだと思うと、全然使うことができず。
たまぁに、気が向いた時に寝る前にふりかけるぐらいだった。
なんとか、それで自分の妄想に歯止めをかけることはできたのだけれども。
それでも、何となく、この香りだけはあきらめきれなかった。
仲良くなったラルチザンのショップの店長さんにも何度も何度もしつこいぐらいに
「Tea For Two入荷したら教えてくださいね!!!!!!」と念を押し、
彼女はぼくの顔を見るたびに「Tea For Twoですね…」と言ってくれるほど(笑)。

そして、11月のとある日、
何気なくフランス本国のラルチザンのHPを見ていたぼくの目に飛び込んできたのが「Tea For Two」の文字。
びっくり。
何度も何度も確認してしまったぐらい。
あれ?再販されたの?
もう嬉しくて嬉しくて、これはひょっとしたら日本でも再販されるかもしれないと思った。
そうしたら、2013年の暮れも押し迫ったある日、店頭入荷のお知らせが飛び込んできた。
もう、これはね、ぼくの強い念が呼び寄せたとしか思えない。
妄想も思い続けりゃリアルと化す(by ケンケン)
という一句を作ってしまった!
さっそく、仕事帰りに表参道のお店へ。
すでに、「Tea For Two」コーナーができていて、
ぼくは店長さんへの挨拶もそこそこに
そのコーナーへ突進。
ほれぼれと、その瓶と箱を眺めたのであります。
ぼくが購入した「Tea For Two」は、量り売りだったために、
味気のないアトマイザーに入っていたけれども、
やっぱり香水というのは、瓶と箱のデザインも重要。
特にぼくはラルチザンのシンプルなボトルデザインが大好き。
シンプルなのに、七角形のボトルにはちゃんと意味があるところも魅力的。
(なんでも、ヨーロッパでは7というのは縁起の良い数字なんですって!)
でね、ラルチザンはさらにラベルの色などにもこだわりが。
この「Tea For Two」もチャイをイメージした薄茶色のラベル。
これも調香師が考えるのだとか。

さて、この「Tea For Two」の調香師はぼくの大好きなオリビエ・ジャコベッティ。
彼女はこの他に、「サフラントゥルブラン」とかラルチザンのアイコンでもある「プルミエフィグエ(青いイチジク)」などを生み出した天才調香師。
そして、店長さんにうかがったら、
今でこそ、他のブランドでも茶葉から抽出した香りが出て有名になったけれども、
実は、彼女が世界で始めて茶葉に着目をして作ったのがこの「Tea For Two」なのだとか。
もう、そんなこと聞いちゃうと、ますます興味を持ってしまうではないですか!
で、余談ではあるけれども、
イチジクを香水の世界に持ち込んだのもオリビエ・ジャコベッティ。
こういう発想ができるのは、さすがフランス人。

閑話休題
さっそく、「Tea For Two」をムエットでお試し。
もう知っている香りではあったけれども、表参道のブティックで改めてかぐと新鮮。
一瞬にしてそこはティーサロン。
でもね、高級なティーサロンというのではなく、もっと陰のある、
なんていうのかなぁ。アジアの片隅にあるような小さなサロン。
プサンスーチョンという紅茶があって、
この紅茶はとても独特。
ぼくはいつも「正露丸の香り」言っていて、好き嫌いが別れる香りではあるんだけれども、
それを彷彿とさせる。
といっても、もちろん、「Tea For Two」は正露丸の香りはしないからご安心を(笑)。
むしろね、キーマン紅茶とか、チャイに似てるかな。
まず香ってくるのはシナモンの香り。
これは、本当に素晴らしいトップの香りです。
甘くて、スパイシーという、ぼくが愛する香り。
この最初の衝撃はどうかみなさんに体験していただきたい。
「わ!これおいしそう!」って思うはず。
それから少しずつスモーキーな香りに変化していく。
そして、それが非常に優しくてあたたかみがある。
日本語でどうやって表現すれば良いのかと考えると、
「ほっこり」という言葉がぴったりなんじゃないかと。
寒い日に家に帰り、あたたかい紅茶を飲むとほっとするじゃないですか。
まさにその感覚を身にまとっているような、そんな感じ。
で、ここがラルチザンのすごいところなのだけど、とにかく香りの変化が楽しい。
この「Tea For Two」にしても、最初はシナモンスパイスの香りで楽しませてくれるんだけど、
その後、だんだんとあたたかみのある香りに変化してくる。
で、そういった変化のベースにあるものは、非常に繊細だけど斬新なもの。
さらに、、どの香水にも共通しているのは、どこか東洋的なお香の香りを残しているところ。
以前会社の人に「ケンケンさん、いつもお香を焚きしめているの?」と言われたほど。
全然香水っぽくないのです。
普通の日本人がイメージする香水というのは、
シャネルだとか、CKだとか、ディオールといった、
いわゆるブランド香水。
それらの香水の中にももちろん、たくさんの名香と呼ばれるものがあるけれども、
えてして、香りが強い。
これはそのほとんどが人口香料で作られているから。
ところが、ラルチザンの場合は、その大半が高級な天然香料からなっている。
もちろん、中には人工的に作り出さなくてはならないものもあるけれども、
ほとんどが天然成分。
だから、押しつけがましく感じないのである。
ただ、ひとつだけ問題があって、すぐに香りが飛ぶ。
だいたいぼくは(ものにもよるけれども)朝、体に10プッシュぐらいするのですが、
たいてい昼にはほとんど香らない。
だから、昼休みの間にもう一度付け直し、夕方にもう一度つける。
逆に言えば、付け直しをしても、強くないので、付け直しをしやすいブランドなのかもしれない。
この「Tea For Two」もだいたい持続時間は3時間ぐらい。
しかも、ぼくはあまりにも好きだから、20プッシュぐらいしてしまう。
なので、今回日本には200本限定で入ってきて、おそらくこれがラストになるというので、
ストック用としても数本ゲット。
これはどうしてもぼくにとっては欠かせない香りだから。
季節的には秋~冬にかけてかなという感じがする。
期間限定でこの香りを楽しむっていうのも良いかも。
残念なのは、今回の発売、100mlがなくて50mlのみというところ。
どうしてもそっちの方が割高になってしまうから。
ま、それでもぼくは好きだから購入してしまうのだけれども…(汗)+(涙)。

【転記ここまで】

というわけで、当時のぼくのこの香水に対する思い入れがどんだけ強いということがお分かりいただけるだろう。

ラルチザンパフュームの表参道店がなくなった時、ぼくは3本のボトルに刻印をしてもらったのだけれども、その中の一本がこの「Tea For Two」だった。それぐらいにぼくにとってはこの香水はなくてはならない香水になったのだ。

そして、面白いことに、一度廃盤になったにも関わらず、この香水は今でも日本での取り扱いがある。(しかも100mlで!)
つまり、この香りは今でも多くの日本人に愛されている証なのだと思う。

アメブロにも書いたが、ぼくが最初にこの香水を手に入れたのは、量り売りをしているお店だった。それしかこの香りを手に入れるすべがなかったために、仕方なく量り売りのお店を使ったのだが、アトマイザーに入った「Tea For Two」は確かに香りそのものはまさに「Tea Fro Two」なのだが、ぼくの心をときめかせることはなかった。
なぜかというと、正規のボトルに入っているわけじゃないから。
やはりぼくにとって香水というのは、そのボトルやパッケージも含めて、トータルで楽しむものなのだ。
だから、アトマイザーに入った香水は単なる香り付きの水でしかない。

実は、ぼくは普段の生活でも香りをアトマイザーに入れて運ぶことはしない。旅に出るときも、フルボトル(トラベルサイズで売っている香水はそのトラベルサイズを買うようにしている)で持ち運ぶ。
つけ直しをしたいという時も、フルボトルを持ち歩く。
それに合わせて鞄が大きくなろうが、そんなことは関係なく、とにかくフルボトルで香水を楽しみたいのである。

だから、この「Tea Fro Two」もフルボトルで購入することができて本当に嬉しいし、もっともっと多くの人にこの香りの素晴しさを伝えたいと思っている。

Note

Top notes: Tea, Star Anise, Bergamot
Middle notes: Cinnamon, Spices, Ginger, Gingerbread
Base notes: Tobacco, Honey, Leather, Vanilla

世界初の紅茶の香水というだけあり、完成度はとても高い。今でこそいろんな人たちがお茶をテーマに香水を作っているし、お茶の香水好きというのは多いと思うけど、この「Tew For Two」を試さずしてお茶の香りを語るなかれ、とすらぼくは思っている。

My Evalution

★★★★★

文句なしの星5。最高レベル。この香りなしの人生なんて考えられない。秋になったら、またたっぷりとこの香りを纏いたい。早く涼しくならないかなぁ。