第186夜 Santal Pao Rosa

クリーミーからどんどん変化する不思議な香り

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DATA

Name: Santal Pao Rosa「サンタル パオロッサ」
Brand: Guerlain
Lauched in 2021
Perfumer: Delphine Jelk
100ml ¥46,200

My Episode

数年前、初めてゲランの香水を購入したものの、その時はウードを使った限定香水だったから購入しただけで、ゲランそのものに対する興味はそれほど強くはなかった。
しかし、今年に入ってから、香水好きの人たちの影響で何度もゲランに通っているうちに、すっかりゲランの世界観に魅了されてしまった。
香りもやはりゲランだけあり、どれも非常にユニークで、店員さんの説明を聞いているうちに、ついついいろいろ試したくなってしまう。
そんなゲランから9月に新作の香水が発売になると聞いたので、早速帝国ホテルの中にあるブティックを訪れた。
「ラール エ ラ マティエール」というシリーズはすでにゲランにあったもので、昨日ご紹介した「ドゥーブル ヴァニーユ」もそのシリーズの中の一つだ。
しかし、それらのシリーズがボトルも含めてリニューアルされ、さらに新作を加えて全17種類となったのである。
ぼくはこのシリーズが大好きで、「ドゥーブル ヴァニーユ」の次に購入するのは「ボワ ダルメニ」「キュイル べルーガ」「トンカ アンぺリアル」のどれかだと思っていた。
しかし、新作発売初日の今日ぼくが一番気になっていたのが、2本の新作のうちの1本である「サンタル パオロッサ」だ。
事前に色々と調べてみたら、どうやらこの中にウードが入っているらしいのだ。そりゃウード探求家として、試さないわけにはいかないではないか。
さっそくムエットに載せてもらう。
最初にぼくの鼻がとらえたのはクリーミーな温かみのある香りだ。
まろやかな雰囲気。
これ、実はぼくにとっては非常に微妙なところなのだが、これにグリーンが加わると、もうダメなんである。
今、気づいたことなのだが、サンダルウッドの香りの中に、ぼくの苦手な要素が入っているようだ。
つまり、このサンダルウッドが、グリーンと混ざることで、ぼくの鼻の中でそれが変換されて、えぐみのようなものが感じられるのかもしれない。
Acqua di Parmaの「コロニアウード」、ルイヴィトンの「オーアザール」がまさにそんな苦手なサンダルウッドなのである。
しかし、ゲランの新作である「サンタル パオロッサ」は、クリーミーさはあるものの、グリーンの要素があまり感じられない。
きっとだから、ぼくの鼻腔の中でえぐみのようなものが再生されないのであろう。
さて、そんな「サンタル パオロッサ」だが、これが実に不思議。
ムエットで試した時と、肌に載せた時と、シャワーを浴びた後に全身に纏った時と印象がそれぞれまったく違うのだ。
ムエットが一番クリーミーさを感じるのだが、全身にまとうと、そのクリーミーさが良い意味で中和される気がする。
熱が加わることで、まったり、もっさり感が薄まるようなイメージ。
そして、肌の上でどんどん変化をしていく。
クリーミーさが奥にひっこむと、今度はかすかに乾いた香りとバラの香りが顔をのぞかせる。恐らくその乾いた香りはヘーゼルナッツによるものだろう。そして、さらに進むと、ミルラやウードの深い香りを感じられ、さらに時間が経つと、またクリーミーさが出てくる。そして、その時のクリーミーの中に、かすかにスモーキーさが加わる。それが、実に美しい。え?あれ?そんなところに煙の神様がいらっしゃったの?という感じだろうか。本当に小さな小さな神様だけど、それを感じられたら、至福だと思う。
そういう変化を次々と肌の上で繰り広げていく香りなんである。
この香りは最初は強く感じられるかもしれないが、時間が経つと、肌にすっと馴染む。
実はこのレビューを書いている間も何度もつけ直しをしないといけないほど。
恐らくぼくの肌がバキュームスキンなだけなのかもしれないが、シャワーの後に30プッシュしただけでは足りないのだ。その後、写真を撮り、こうしてパソコンに向かって一時間ほど経つが、つけ直しをしないといけないほど肌なじみが良い。(あくまでもぼくの場合、だとは思うが)
なんだか、この冬はこの香りをたっぷりと使ってしまいそうな予感がする。
それほどまでに美しい香りなのである。
薔薇薔薇しくはないので、薔薇好きには物足りないかもしれないが、逆に薔薇はちょっと苦手という人はぜひ試して欲しい。
薔薇がいるのはわかるけど、さりげなくいるところがこの香りの良さだと思う。

もうひとつ、このシリーズで特記しなくてはならないことは、ボトルのキャプの部分をカスタマイズできるという点。キャッププレート(キャップの上部分)は8種類から、コード(キャップの首に巻かれている紐)は6種類から選ぶことができる。さらに、コードに留められたボタンも金と黒の2種類から選ぶ。

ぼくは、この香りに合わせてトップを赤のレザー、コードも赤、そしてボタンを金色にしてもらった。
これなら箱の中にしまっても、トップを見ればすぐに「サンタル パオロッサ」だとわかる。こういうところも、非常に憎いなと思うのである。

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Note

Cardamon, Sandalwood, Fig, Hazelnut, Rose, Agarwood(Oud), Myrrh

まだFRAGRANTICAには記載がないので、他のサイトの情報によると、上記の香料が明かされているようだ。
え?フィグ(いちじく)いるの?とちょっとびっくり。


My Evalution

★★★★★
最初はぴんと来なかったし、ぼくの肌の上では相変わらず消えてしまい、拡散性は実はそんなに期待できないのだが、落ち着いた香りで、薔薇らしくなくて、そんなところが非常に気に入った。この秋冬、きっと大活躍してくれる香りになるだろうという予感も込めて、星5つ。