第227夜 1986 Eclectique

奇才調香師の奏でるシャープでモダンな香り

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DATA

Name:1986 Eclectique (1986 エクレティック)
Brand:Les Bains Guerbois(レバンゲルボワ)
Lauched in 2021
Perfumer:  Bertrand Duchaufour
100ml ¥25,300

My Episode

このブログの中でもっとも登場回数の多い調香師はベルトラン・ドショフールだろう。ぼくが彼のことを初めて知ったのは、ラルチザン・パフュームの香水を彼が手掛けていて、それを知ってからだった。ラルチの中でぼくが好きになる香りがことごとく彼が作った香水だったのだ。
それから、ぼくはベルトランの作る香りは注鼻している。
とはいうものの、彼の作る香水のすべてが自分の好みかというと、実はそういうわけではないので、闇雲に買うというわけではないのだが、少なくとも彼の手掛けた香りはすべて試したいとは思っている。
さて、今日ご紹介する香水は昨年発売されたばかりのベルトランが調香した香りだ。
ぼくはどういういきさつで、それがベルトランであることを知ったのか忘れてしまったのだが、とにかくノーズショップの銀座店で取り扱いがあったので、試してみた。
トップから感じるのは非常にシャープな香りである。フルーティーな感じもするのだが、それは甘くて暖かい香りというよりも、もっと冷たくてモダンな印象。
肌の上でしばらく経つと、ちょっと胡椒のようなピリッとした香りが顔をのぞかせる。そして、それが実に外国チックなのだ。なんていうか、日本の国内ではなかなかこういう香りはないよね、と思えるような独特の外国感がある。
その外国感というのはどこから来るのか鼻で探ってみたのだが、恐らくゼラニウムの独特の辛さからくるんじゃないかと思っている。この辛さというのは、少しメタリックな雰囲気を持っていて、それがあまりにも強いと、ぼくの苦手なオゾン系の香りになるのだが、この1986はそんなにキンキンしていないのが良い。
ところで、レバンゲルボワというブランドは非常にユニークなブランドで、もとはと言えば、19世紀末にパリに生まれた公衆浴場施設をイメージしている。文化人たちが愛したというこの公衆浴場施設は、100年後に「レバンドゥーシュ」と改名してナイトクラブへと生まれ変わったのだが、2015年に再び「レバンゲルボワ」として5つ星ホテルへと変貌を遂げたのである。
香水の名前につけられた数字は年号で、このホテルの歴史を感じさせる香りが作られている。
例えば、この1986は、エレクティックと名付けられているのだが、まさに1980年代のどこか浮足立った、でも非常に前衛的な雰囲気を表現しているような気がする。タバコやレザーのジャケットといったその時の雰囲気をまさに再現している気がする。当時はタバコをあちこちで自由に吸っている革ジャンを着た人なんて、街中のいたるところにいたわけだし。
でも、ぼくにとっては、やっぱりこの香りは海外の都会の香りという感じがして好きだ。

NOTES

Top notes:Apple, Black Pepper, Cardamom, Davana, Mandarin Orange
Middle notes:Honeysuckle, Honey, Geranium, Cloves, Broom, Jasmine
Base notes:Tobacco, Oakmoss, Patchouli, Vanilla, Musk, Amber, Opoponax, Mate

トップはまさにフレッシュでジューシー。それがだんだんとクローブゼラニウムのメタリックな辛さに変化し、それがどんどんスモーキーに変わってくるのだが、甘ったるい煙ではなく、甘さ控えめなスモーキーなところが良い。ちょっとベルトランらしい奇抜さのようなものも感じられて、久々の彼の新作に心が躍る。

My Evalution

★★★★
ベルトランなので、5つ☆をつけたいところなんだが、なんとなく、このメタリックな感じがまだぼくの鼻にはしっくりこなくて、でも悪い香りではないので、いまのところ星4という評価。