第259夜 1472 La Divina Commedia

甘いだけじゃない、影も伴う美しい香り

f:id:happyinkdays:20220316152210j:plain

 

DATA

Name:1472 La Divina Commedia 
Brand:Histoires de Parfums(イストワールドゥパルファン)
Lauched in 2021
Perfumer: unknown
30ml ¥5,500

My Episode

香りの図書館という、なんともぼく好みの魅力的なコンセプトを持つブランド、イストワールドゥパルファンから新作香水が届いた。
イストワールドゥパルファンの大きな特徴は、著名なキャラクターや、マテリアル、神話などをテーマにした香りであるということ。
ぼくは、主にこのブランドは、ウード系の香水を何本か出しているので、そういったウード系香水を中心に使っているのだが、その他にも、例えばヘミングウェイや、マルキドサドなどの香水も好きだ。
今回の新作のテーマはダンテの「神曲」。実はお恥ずかしながら、「神曲」は難しいという先入観を持っているためにまったく読んでいない。
この香りのテーマということで、調べてみると、地獄、煉獄、天国を遍歴する話が詩によって綴られているので、せっかくなのだこれを機に読んでみようかなという気にはなっている。
さて、香りそのものは、なかなかユニークだ。
肌に載せた時にまず感じるのは甘い花の香り。
ただ、それも単なる花の香りじゃなくて、ちょっと複雑な甘さを感じる。そして、次第に、ちょっとしたスパイスが感じられるようになる。どうやらそれはシナモンのようだ。時間が経つにつれて、フラワリーな甘さから今度はラムのような深みやアンバーのようなかすかなスモーキーさが伴う。
そこにぼくは影を感じたのだ。
単なる甘いだけじゃなくて、その甘さをひきたてるための影。影があるからこそ、甘さが前に出る。
つまり、この香りは天国と地獄の両方を表現しているんじゃないかと思ったのだ。
春らしい陽射しを感じる香りなのだが、どこか春というのは落ち着かない気分になることが多い。
ふとぼくが思い出したのが紀貫之の有名な歌。

ひさかたの 光のどけき春の日に
しづこころなく 花の散るらむ

光のどけき春の日なのに、どこか心が落ち着かない、まるでそれは散りゆく花のようだ。
という内容の歌で、ぼくは昔からこの歌が大好きだった。
この香りはまさにその春のどこか落ち着かない香りも感じさせるんじゃないかと思った。

NOTES

Top notes:Ylang-Ylang, Solar notes, Artemisia
Middle notes:Jasmine, Olibanum, Cinnamon
Base notes:Rum, Benzoin, Amber

今回色々調べて分かったのが、「アルテミジア」がキク科ヨモギ属の多年草で、日本では朝霧草という名で知られている植物であるということ。そして、ジャスミンのちょっとオリエンタルな香りもこの香りからは感じられ、それも少し影を感じさせる一因になっていると思った。

My Evalution

★★★★★
もしこの香りが単なるフローラルだったら、ぼくはそんなに感動はしなかっただろう。しかし、しっかりと影も感じられたので、この香りがとても好きになった。春先から初夏にかけて活躍しそうな香りだ。

官能的でありながら、愛を凝縮させた愛の緊張感が漂う香りというのも、今、愛を求めて日々を送っているぼくにはぴったりなので、夜の街に出る時のお供にもぴったりだと思っている。